論理の感情武装

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イルリキウム、ワグナーとして① ~2013.4-2015.2~

イルリキウムです。

 


声優ユニットWake Up, Girls!は、今年の3月末で解散を迎える。
結成されたのは2013年4月1日。丸6年の活動期間であった。

フォロワー諸氏の中にはご存知の方もいようが、私は現在6年制の大学に通っており、2019年3月に卒業と相成る。
すなわち入学したのは、2013年4月。

そう。モロ被りなのである。

私にとって、Wake Up, Girls!は大学生活を7色、いやそれ以上に彩ってくれた、かけがえのない存在だ。
いち年の、ひと月のズレも無く、「Wake Up, Girls! の彼女たち」と「大学生のイルリキウム」は時を共有していた。
運命的なものを感じてしまうのも無理はないだろう。

とは言え、実は6年間みっちりワグナーだったわけではない。
学業との両立はそれなりにハードであり、イベント参加も各種番組の試聴も斑模様だったのが現状である。


ここからは、
私というひとりのワグナーの、
ムラがありつつも彼女たちを推し続けたワグナーによる、
「ワグナーそれぞれの持つ歴史が好きだ」と自負する全ワグナーのための、物語だ。

 


 
2013年

日本人学生と留学生とが半々の人数比で、ともに日本文化を学ぶ一般教養科目の講義。
そこで私は、「どこそこでコスプレの催し物が開かれていて……」と身振り手振りを交え語る学生の姿に釘付けになった。
別段、クラス全体に対してのプレゼンを課せられているわけではない。たった6,7名でのグループ・ディスカッションだ。
なのに、その真に迫った言葉。本当に興味があるからこそ出せる説得力。

彼が、私をワグナーにするきっかけとなった張本人、K氏である。

休み時間に話しかけてみると、それはそれは面白い男であった。
専攻分野はもとより、アニメソング全般に造詣が深く、話し上手で聞き上手。
意気投合した我々はその後、一緒にカラオケへ繰り出す間柄となる。


この頃私は、彼が頻りに口にする「MONACA」という音楽制作団体が気になっていた。
調べてみると、出るわ出るわ。
今まで何の気無しに聴いていた、あの曲も、この曲も!

特に、小学校高学年から触れていたアイドルマスターシリーズが後押しをした。
さすがナムコ。土壌が凄い。
YMOのパロディバンド〈Oriental Magnetic Yellow〉に心酔していたため、ナムコへの畏敬はますます深まったのである)

ja.wikipedia.org

 

ここで私は、「作曲家推し」なるスタイルを知る。
自分が知っている曲たちの作曲家を調べまくり、彼らの曲の特徴、作風を大まかに把握していった。
楽理解析ブログなどを読み始めたのもこの時期だっただろう。

なお、人気作曲家は数多のアーティストや作品に曲を提供するため、それらを網羅することは茨の道だということも、遠くない未来に知ることになるのだが……。

 

11/29 Fri.
Wake Up, Girls! 炎の七番勝負 ヤマカン出てこいやー!
秋葉原UDX

寒さが肌を刺すようになってきたある日、私は家族で秋葉原に出かけることになる。パソコン周辺機器探しである。
迅速に買い物を済ませ、車を駐めているUDXで昼食でも摂ろうと戻ってきた13時ごろ。

運命の出会いが、そこに待っていた。

むすび丸が、手を振っていたのである。

物産展に滅法弱い私は、宮城県フェアでもやっているのだろうと思い、引き寄せられる。
果たして、そこで行われていたのは物産展ではなかった。

 

Wake Up, Girls!

 

その字面には見覚えがあった。

……はっ! そうだ、とらのあなにポスターが貼ってあった!
大学帰りにとらのあなアニメイトへ寄ることが多かった私は、そのポスターをよく目にしていたのだ。
「音楽:MONACA」「脚本:待田堂子」「監督:山本寛」という絶大なインパクト。
制服姿の7人がV字に並んで微笑んでいるシンプルなキービジュアル。
そうか、あの作品は、仙台が舞台なのか。

心のどこかで気になっていた作品。木材に先端だけ喰い込んだ釘のように。
MONACAを詳しく知ったことで、その釘は、木材に自立するほどまで、先進した。
そしてこの日が、金槌の、最後の一振りだった。

私は、「せっかくだから」と、ひとりも知らないWake Up, Girls!のプリントクッキーを購入し、すぐにK氏にメールを飛ばした。
すると彼も映画(劇場版『七人のアイドル』)を観に行く予定だという。
腹は決まった。一緒に行こう。

ステージで躍動する、新人声優7名の姿を軽く目の端に捉えて、私は呟いた。

 

「いくぞ、がんばっぺ」

 

"ワグナー"イルリキウムが、産声を上げた。

 

 

2014年

1/11 Sat.
劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』鑑賞
@TOHOシネマズ 六本木ヒルズ

久し振りの映画館だった。
2011年末に観た『イナズマイレブンGO 究極の絆 グリフォン』以来である。

緊張しながら劇場内へ。入場時に封筒を受け取る。来場特典だ。
「みなみ」というふたつ縛りのキャラクタがホットドッグに齧り付こうとしている隣で、
「よしの」というストレートヘアのキャラクタは目を閉じ厳しい顔をしている。

 

プリントクッキーの包み紙に記されていたキャラクタ紹介を思い出しているうちに、劇場灯が落とされた。


次に、劇場の階段が見えるほど周囲が明るくなったとき、私は完全に上気していた。
頬を伝う涙を拭きたいのだが、体が動かない。
隣のK氏も、動く気配が無い。

「アイドル、やらせてください!」

島田真夢がその言葉を放った瞬間、ぞくぞくっ、と震えたのを憶えている。

 

ああ、虜になってしまったな。
アニメシリーズも、観るしかないな。
真っ白なスクリーンを見つめながら、そう感じた。

 

前日1/10から開始していたアニメを毎週リアルタイムで視聴しながら、K氏と感想を言い合う日々が始まった。

私が、欠かさずリアタイでアニメを観ることは非常に珍しい。
それを知らない同級生が「アニメ好きでしょ? 今季何観てる?」と質問してくれることがあるが、そんなのは全く分からなかったのだ。
しかし、このクールに限れば、自信を持って答えられた。

「『WU,G!』いいよ、オススメ」

※当時は、略称にカンマを入れるのが主流だったように思う。オフィシャルブックのタイトルにもなっていたからか。


2/1 Sat.
アニメグラフvol.02 一冊まるごと!「Wake Up, Girls!」発売

www.animegraph.net

WUGへの熱量が冷めやらぬうち、ポスターと雑誌の間を行く唯一無二の刊行物・アニメグラフがWUGを特集してくれるというので、喜び勇んで購入した。

なお、この頃の私は「久海推し、3次箱推し」状態である。

アニメを観る限りでは久海菜々美が一番のお気に入りだったため、3次元もななみん推しになるのが自然かな? と思っていたのだが、
アニメグラフや映画のパンフレットで、写真を見たりインタビューを読んだりするにつけ、全員可愛いし考え方も魅力的だし、とドツボにハマり、結局「箱推し」的なスタンスを取らざるを得なかったのだ。

もちろん当時は、このアニメグラフが「推し」に関する伏線になろうとは思いもしなかったのだが。

 

9-12月
「Character song series」リリース

2年生に進級した私は、アルバイトで貯めたお金をCDに吐き出していた。
WUGについては、アニメシリーズが終わって落ち着いていた夏、『うぇいくあっぷがーるZOO!』の制作発表があり、
引き続いてキャラソンシリーズのリリースの情報も入ってきた。

昨今のアニメでは、キャラソンまでをパッケージ化するのが主流である。
私も息をするように購入し、穴の空くほど(元々CDには穴があるが)聴き込んだ。
故に、『オオカミとピアノ』は、当時からそらで歌えたのである(だからと言って、ファンに全部歌わせる声優がいるなんて、想像の埒外だろう?)。

 

12/14 Sun.
Wake Up, Girls! Festa.2014 Winter ~Wake Up, Girls! vs I-1 club~」
幕張メッセ

何を隠そう、私はこのイベントが、人生初参加のライブであった。
クラシックのコンサートの経験しかない私にとって、声優のライブというのは「コミケットサマソニを足して2で割らないカオス」というイメージであり、一見、軍隊的規律の下で揃っているように感じられるサイリウムも合いの手も、ミクロ的に見たら方々で殴っただの殴らないだのコールが違うだの合ってるだのという抗争が渦巻いている、総合格闘技だと思っていた。
端的に言えば、怖かったのである。

お気づきだろうか。
私は、2月に開催されたワンフェスにも、みるくらりあっとにも、4月に開催された記念すべき初単独イベント(ワグフェス)にも、夏の1stツアーにも、アニサマにも、参加していないのである。

なんという、損失。

当時の私に言ってやりたい。
「推しは推せるときに推せ」と。
(と言っても、もしかしたら専門の忙しくなってきた2年生の私は、試験の方が大事だから今は「推せないとき」だ、と突っ撥ねてくるかもしれない)

 

今回は、朋友・K氏がチケットを取ってくれた。
イベント経験が豊富な彼と一緒なら、何も恐れることは無い。ここで引くなど、伊達藩士の名折れだ(上総国生まれが何を言うか)。

こうして私は、初めて、生のパフォーマンスを目の当たりにした。

席は最後方のEブロック。
そんな事実は、意識から吹き飛んだ。
真っ直ぐな歌声と、ダイナミックなダンス。まだこなれないMC。
全て、目と鼻の先で行われているリアリティ。会場全体を包む熱気……。

総合格闘技ではなかった。
みな、同じ方を向いている。
みな、笑顔を湛えている。
サン=テグジュペリ曰く、「愛とは同じ方向を見つめること」。そういうことだったのか。

 

私は、3次元WUGの虜にもなってしまった。

 

息が真白く可視化する。各々の興奮を物語る。
帰りがけに、オフィシャルファンクラブの先行メルマガ登録を済ませたことは言うまでもない。

 

12/29 Mon.
アニメグラフvol.6 一冊まるごと!「Wake Up, Girls!」もう1回! 発売

アニメグラフが、間を置いて同じ作品を特集したことは現在に至るまで無い(連続ならばナナシスが挙げられる)。
その上、この号にはサイン会の抽選番号が付録として同梱されていた。

期待はせずにいたのだが、後に発表された番号を確認すると、なんと当選しているではないか。
ああ、神様。優良な成績を死守し、教え子たちの志望校合格をサポートし、頑張って運転免許を取得した私へのご褒美ですね!

そんなことを思いながらも、私はこの頃、成人式準備に奔走していた。運営委員だったのである。
正直、WUGちゃんより気掛かりだった。
マジで忙しかったんだから。

 

 

2015年

2/20 Fri.
アニメグラフサイン会(青山・奥野)
秋葉原ボークス

著名人のサインなど、そうそう貰えるものではない。それが、自分の大好きな相手なら尚更だ。
グッチ裕三さんのディナーショーに行ったときに、Tシャツに書いてくれたものが、私の持つ唯一のサインだった。
(高校の校長のサインも持っているが、業界がグッチさんより狭いのでノーカウント)
しかもそのときは、齢もひと桁。怖いもんなし。

 

今や、成人したミーハーである。
秋葉原で下車した瞬間から、ド緊張に決まっている。

3秒に1回のスパンで念入りに時刻を確認し、集合場所に向かう。
希望する宛名を記入した紙切れを握る手が震える。安静時振戦。パーキンソン病か。

予定時刻だ。
歓声と拍手が起こる。え、いるの? その向こう側にいるの?
……こっ、声がする!!?!?! ほほほほほほほほほホンモノノノノ

整理番号順に案内されていく。
目をこする。数字がよく判別できない。線文字Bのように見える。

自我を取り戻すために、隣のお兄さんに話しかけた。
私は人と話すことでアイデンティティ・クライシス(意味が違うぞ)を免れようとする人種である。

聞くと、彼(以下N氏)はかやたん推しだという。
今回のイベントはよっぴーとかやたんの2人であり、貰える相手も番号によって決められる。
つまり、強運で推しのサインイベントを引き当てたということだ。
N氏と話しているうちに、眼前に迫るよっぴーとかやたんを視界に入れる余裕も生まれてきた。

そうこうしている間に、順番がやって来た。まずはN氏から。
すると彼は、挨拶するが早いか長机の前に跪き、そのままかやたんを仰ぎ見る形で会話を始めた。

……そういう仕来りがあるの?

冷静になって頭を回す。大丈夫。よっぴーの机にいる男性は立ったままだ。どっちでもいいのだ。

そして私の番。

奥「こんにちは~」

イ「コ、コンニチハー」

決して林鼓子ではない。

数十センチメートルの距離に、かやたんがいる。私に話しかけている。私も話しかけている。会話だ。アマチュアアナウンサーと、プロの声優のイシュカン・コミュニケーション

気付いたら、色紙に「ピアノ弾ける人、あこがれます!」というメッセージが添えられていた。
私、ピアノ弾くなんて言ったんだっけ。言ったんだな。

シンプルに、ずっと見惚れてしまった。聴き惚れてしまった。

N「どうだった?」
イ「やばば」

お見事。奥野香耶推しの爆誕である。

 

(②に続く)

 

2/18 タイトルと本文の一部を訂正
・「2013.4-2015.3」→「2013.4-2015.2」
・「アニメイトにポスターが」→「とらのあなにポスターが」
・「アニメイトへ寄る」→「とらのあなアニメイトへ寄る」