論理の感情武装

PDFに短し、画像ツイートに長し

血液検査の結果を説明しに来たイルリキウム先生

f:id:I_verum43:20220408221459j:plain

※写真はイメージです

 

「先生、血液検査の結果はどうでしたか?」

 

結論から言うと、重い感染症ではなさそうです。ざっくりと説明すると、感染症のときは白血球とか、CRPとかいったところの値が上がってくることが多いのですが……、はい、白血球はこのWBCというところですね。そうそうそう、ワールド・ベースボール・クラシックと一緒ですけど、そうじゃなくて、white blood cellですね。まあ白・血・細胞ってまんまなネーミングです。ちなみにその下のRBCは赤血球で、ええ、おっしゃる通りで、redのRです。ただ、ちょっと芸が無いですよね。ってことで、ひと単語の言い方があるんですよ。白血球は、leukocyteっていいます。リューコサイト。これ実はだいぶ分かりやすい名前でして、leuko、の部分はギリシャ語でレウコス、「白」って意味です。医学用語ではleukemia、白血病とかでたまに見る単語なので馴染みがあるといえばあるのですが。あ、そうそう、反対の意味で「黒」、これがギリシャ語でメラスって言います。メラ……そうですそうです、メラニン色素の名前はここからきていますね。で、この黒と白、メラスとレウコス、を組み合わせて、メラノレウカ、って言葉が作られたんです。何かっていうと、とある動物の学名なんですけど、白黒の、あー、シマウマじゃなくて、あっそうですそうです、パンダです! ジャイアントパンダですね。学名をAiluropoda melanoleucaといいます。白黒の、って見た目をそのままつけたんですね。シンプルで分かり易いと思いませんか。えっと、属名のアイルロポダ、これはですね、ギリシャ語の「猫」と「足」からきてます。中国語も大熊猫、ダーシォンマオ、っていいますし、ネコなんですねぇ。話ちょっと変わりますけど、モンスターハンターってご存知ですか? いやね、私はやったことないんですけど、アイルーってキャラクタがいるらしくて。見てみたら猫っぽいキャラクタだったので、まず間違いなくアイルーロスが由来でしょうね。podが足っていうのは意外と単語あるんですよ。なんとかポッド、って思いつくものありますか? なるほどiPodですか……あれは確か、宇宙船だかなんだかの取り外せる部分みたいな意味だったような、ちょっと自信ないですけど。他には……あっいいですねテトラポッド! まさにですよ。テトラが「4」って意味ですから、4本の足が出ている構造物、ってことですね。ちなみにtetrapodには、4本足の脊椎動物って意味もあって、こっちの方がそのままの意味っぽいですよね。専門用語になると、podiatry、足外科とか、podocyte、足細胞とか。podiatricとか、小児科のpediatricと激似でちょっとな、って感じですよね。え? あ、そうなんですよ、手外科とか足外科とかいう言い方するんですよね。整形外科って結構細分化されてて。すんません話ズレましたね。そういえば、leukocyteのcyteの部分の話してなかったんじゃないですっけ。あれは、ギリシャ語のキュトスからきてます。ほら穴とか、空間とか、管とか……そういった意味合いの単語で、医学用語だと総じて「細胞」という意味になります。そうそう! 忘れてた、赤血球にも、erythrocyteって単語があるんですよ。もうお分かりですよね、エリュトロスが「赤」です。こういうのって、植物の学名にいっぱいあるんですよね。赤い樹液の、とか、赤い葉の、とか、赤い萼の、とか……。ここまでくると血小板のお話もしておかないといけないですね。あ、検査結果は正常値でしたのでご安心ください。このPLTって書いてあるのが血小板です。英語でplateletっていいます。我々がよくプレート、プレートって言ってるやつですね。plateはそのまま板ですし、おしりにくっついている-letっていうのは、指小辞といって、「小さい」って意味をくっつけるパーツなんです。小さい板、ってことです。いやー、まんまなんですよこれがまた。ブックレットとかのレットもそうですよ。ちっちゃい本。そういえば、指小辞ってもちろん各言語にあるんですけどね、たとえばドイツ語だと-leinとか-chenですね。あ、ひとつじゃないです。複数種類ある言語もけっこうあります。有名どころだと、女性って意味のフラウ、が、-leinがくっついてちょっと形がかわるんですが、フロイラインになります。フロイラインはたまに聞きません? お嬢さん、って意味ですね。そうそう、なんかかわいらしさとか、幼い、みたいな意味も指小辞は表します。あとはメルヘン。お伽話。これなんかも、元を辿ると-chenがくっついている単語ですね。そうそう……言語好きの間では有名な話ですけど、ロシア語の指小辞は、カっていうんです。ウォッカ。お酒のウォッカってあるじゃないですか。あれは、水って意味のヴァダーに、カがついて変化した形です。言ってみれば「お水ちゃん」なんです。さすがロシア人って感じしません? まあ調べてみると、水による希釈がどうとか、なんかお酒を造るときの過程でそういう表現になったかもって話ですけど、それにしてもね。他はそうだな、イタリア語とかは分かりやすいんじゃないですかね。音楽用語で、アレグレットはややアレグロに、ってことで、なんとか-ettoはやっぱり指小辞です。スパゲット、これスパゲティの単数形ですけど、もともとスパゴ「紐」って意味の単語に-ettoがついたんです。あ、さすがですね、スパゲッティーニね。その通りです。なんとか-inoも指小辞です。複数形が-ini。だから、スパゲッティーニって、スパゴに2回指小辞つけちゃってるんですよ。あっ、パスタ詳しいですか。じゃあカペッリーニもご存じですね。あれは髪の毛って意味のカペッロに-iniがついたものですね。ほっそーいパスタでエンジェル・ヘアーってありますけど、あれはイタリア語のカペッリ・ダンジェロの直訳ですね。あ、ダンジェロは、d'angeloです。まさしく。angelです。オレッキエッテはどうですか? 耳みたいな形したショートパスタ。あれは耳って意味のオレッキオに-etteがついてます。お腹空いてきましたね。そろそろお昼の配膳の時間じゃないですか? えっと、何しに来たんでしたっけ私。