論理の感情武装

PDFに短し、画像ツイートに長し

MONACAを愛する「MOタク」の曲たちを愛し、ついでに医療機器にたとえてみる

イルリキウムです。
 

才華爛発なる作曲家を多数擁する有限会社モナカ(MONACA, Inc.)
私がその存在をはっきり意識したのは、実はつい最近の話である。


軽く思い出話を

話は2013年に遡る。

らゅしあ
らゅしあ (@Astro_phom) | Twitterと知り合い、私の人生は予想していなかった方向に大きく舵を切った。ちなみに、私にとって彼は、大学に入って初めて出来た他学部の友人である。
 
初めて彼と一緒にカラオケに興じた際、彼の、アニソンをメインとした楽曲一般に対する造詣の深さに、度肝を抜かれた。
言わずと知れたElements Gardenのファンである彼は、私に「楽曲制作軍団」の何たるかを教えた。
神前暁田中秀和上松範康といった名前が挙がり、彼らの作品を聴く度に「これも知ってる」「わ~有名じゃん」と気付きを得た。
 
思い返せば、ゲーム「もじぴったん」シリーズの楽曲は当時小学生だった私の心を打った。
体調を崩して保健室で横になりながら『じゅもんをあげるよ』を口ずさんだ記憶がある。それほど好きな楽曲だったのだ。
が、誰が書いていたかは知らなかった。
 
2005年ごろからネットに入り浸っていたため、ニコニコからアイマスシリーズの楽曲に触れた。このあたりから、「神前暁」といった名前そのものはインプットし始めていた。
が、その程度だった。
 
そう。2013年のこのときまで、私はさほどクリエイターを意識して曲を聴いていなかったのである。

らゅしあ氏の類稀なるプレゼンスキルによって、私は作曲家沼に浸かることになった。
そんな最中、Wake Up, Girls! 七人のアイドル』のロードショー。
私はワグナーとなり、MONACAの虜となる。
 

2018年。
らゅしあ氏に頼んで『WUG関連楽曲解説』をネットの海に放流してもらったところ、彼のもとに、「これを書いた人間はツイッターをやっていないのか」という問い合わせがあったらしい。
そこで彼が何の気なしに放った言葉を、私は今も憶えている。

MOタク???
どっかのタクシーかと思ったわ。

 

そして現在

ツイッターアカウントを制作した私ことイルリキウム(イルリキウム/43Tc (@I_verum43) | Twitter)は、MOタクと呼ばれる方々と少しずつ認知を交わしていく。
 
ここで、もうひとりのキーパーソンが登場する。まくらまくら(ねずみ)@2020春M3 E-16a (@makura2424) | Twitterだ。
彼とはTWEEDEESのインストアライブで初めて顔を合わせた。
ツイッター上で声を掛けたのは私だが、彼もノリノリであった。
出会い厨2人の邂逅である。
 
そうして、彼からMOタクの活動情報を得ていくうちに、MONACAへのオマージュを尽くしたアルバムを制作していることを知る。
・Why don't you eat MONACA?
・1.5(next...?)
・Why don't you eat MONACA? vol.2
この3枚をネットで購入し、ようやく、ようやく……! 全曲聴いたので! ここに簡単ながら纏めておこうと!! そういうことです!!

ただ、楽理解説に立ち入るのは諸氏を前に気が引けてしまうので、本稿では比較的感情に寄った感想を綴っていこうと思う。
 
で、ただ感想を並べ立てるだけではいかん、と私の中のおちゃらけマインドがさっきから喧しいので、各曲を聴いてぱっと思い浮かんだ医療機器も一緒にご紹介する。
ほら、キャラクターにイメージアニマルとか、この人はカクテルでたとえると○○とか、なんかそういうやつあるじゃん。面白そう。何を使ってたとえるかって話になるけど、私の専門考えたら、それは医療機器か薬か病気の名前になるよね。その中だったらさすがに医療機器が良いよ。うん。

というわけで参ろう。MOタクに愛とリスペクトを込めて。
 
 

Why don't you eat MONACA?

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1. supernova
作詞・作曲:ゾウリムシP
編曲:高橋涼ノ介
Guitar:ゾウリムシP
Bass:はーら
ド頭堕ち。爆発的インパクトを残す6和音は、それ自体がマイナス2桁等級クラスの輝きを放っている。Maj7thをしばらくぶら下げておくのってズルいな好きだ……。
転調が随所に挟まるが、違和感のないコードワークでテンションが上がる。
鍵盤弾きの気持ちとしては、サビの裏で動くオクターブのピアノに「それーー!!」と声を上げてしまう。カウンターやちょっとした小物の音色にも気を遣われているのが分かる。
構成は盛り沢山ながら、山と谷がしっかり作られていて飽きさせない。まさに作曲巧者。
ラストの倍テン、そしてⅠaug/Ⅶ♭。込められた想いが伝わってくるようだ。
 
歌詞を見ると、暗喩ではありつつも対象はハッキリしているため、ストレートに響いてくる。随所に散りばめられた"彼女たち"を連想させるフレーズも見事。
力強い歌詞に似合う、サビのシンプルなメロディ!
テクニカル過ぎず、かつメッセージが詰まった、幕開けに相応しい名曲。

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そんな曲には聴診器(ステトスコープ)がしっくり来る。
医師といえばコレという代表的な道具だ。
アナログに音を増幅させるというとてもシンプルな作りだが、循環器系・呼吸器系の多くの疾患を拾い上げるのには欠かせない、情報をたくさんくれる道具でもある。決してパフォーマンスで持っているわけではない。
みんなの座右に。
 

2. Trap of blue
作詞:λ
作編曲:夏屋 角
Vocal:夏屋 角
Guitar:ゾウリムシP
Bass:はーら
歌詞にもあるようにブルージィな一曲。
夏屋さんの声質がかなりタイプで惹き込まれた。ポイントは、16分という細かい音価に嵌め込まれた詞だろう。いわゆる「音ハメ」が良い。
具体的には、〈どんなに言い訳しても 許してはあげない〉や〈まだまだ遊び足りない? お月様も欲しがり〉などである。緊張感が生まれる。
2Aの前半から後半に橋を架けるパートがまた良い。細かく無音を挟んで、ライトが明滅するような視覚効果を惹起できる。昔、私の曲にも取り入れたことがある。めっちゃ締まる。
 
いやー、ベースソロカッコよすぎな……。半音上行で張り詰めた空気がマックスに達したところで、ピアノとオルガンに絡んでくるスラップ。死ぬでしょ。私は死んだ。
そんでもって、落ちサビ長二度下げ。カッコいいの極値でしょ。
ピアノの低音とヴォーカルの色っぽいG音。全音下がるだけでこんなに変わる? や、変わるんだよこれが長二度の魔力。

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こんな小悪魔的でオトナな雰囲気の楽曲には、点滴ルートやドレナージチューブの途中に取り付けて交通整理をする三方活栓が合いそう。仲良くなれたかと思ったらぷいっとそっぽを向かれて進路を断たれてしまったり、そっぽ向いた先で別の人と親密になられちゃったり。
 

3. 浅き春に寄せて
詩:立原道造
作編曲:ふじそば
Vocal:IA(Vocaloid programming:凜)
Drum:高橋涼ノ介
Guitar:三島涼
Bass:hiiro
Piano:のす(Edit:ふじそば & Tansa)
Mixing Engineer:ちばたろう
Programming & Arrangement Assistant:Tansa
立原道造か……!
繰り返す〈たったそれだけ〉には、一読すると寂しさや切なさが込められているような気がするが、何度も読み返すうちに、その"だけ"を大切に抱きしめるような、立原の柔らかな感性がひしひしと伝わってくる。
情景も思い浮かぶ。最終盤の三点リーダがこれまた素晴らしく良い。カメラがズームアウトしていくような。
 
何人かが曲を付けているようだが、ふじそば氏のメロディはこれまた優美だ。
〈啼いて〉でみられるような半音のアプローチが、何を措いても綺麗である。「半音が多い」と、本人もいつだかおっしゃっていたような気がする。好き。
テンポを6-8くらい落として、混声二部とかでも聴いてみたい。

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優しい空気感に包まれて暖かな気持ちになれる、これはバチ型の小児鍼。鍼といっても皮膚に刺すのではなく、経絡に沿ってさすって用いる。じんわりと温かくなり、春の日差しを感じさせる。
 

4. 放課後マーガレット
作詞・作曲:もや
編曲:NN錠
Guitar:三島涼
Bass:もや
Vocaloid:かしお~れ
Mixing Engineer:凜
Ⅰ→Ⅳの進行にちょこっと挟まるⅠaug/♯Ⅳってどうしてこんなにキュートなんかね? 普通ⅠからⅣに上るところをオーバーランして「♯Ⅳまで行き過ぎちゃったぁ、てへっ」って戻ってくる感じが可愛いんかね?
〈だね〉〈だよ〉という語尾がるんるん感を増幅させているし、チューブラーベルなどの金物楽器の使い方も軽くて好みである。
小学生の時遊んだ景色がぱっと眼前に広がる、郷愁のようなものも内包しているようだ。

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スキップしたくなるような気持ち! 見た目の可愛らしいマイクロモスキート鉗子、特に無鈎の曲がりモスキートが良いだろう。止血にも、糸を引っ張って垂らしておくのにも大活躍だが、術野から大量にぶら下がっているモスキートはキュートだ。緊迫した手術においても、あの小柄で丸みを帯びた形が、心を落ち着かせてくれる。この曲にも同じような安心感を覚えた。
 

5. Out Of One's Mind
作詞・作編曲:カクキュー
Vocal:Rana(Vocaloid programming:カクキュー)
Mixing Engineer:ちばたろう
特に2Aの頭でポコポコ鳴ってるのが愉快で、全体を通しても高速で流れていくのが実に可笑しい。
〈抗えないの〉のベースラインはかなり挑戦的で、おっ、と良いスパイスになっている。あとは〈跳ねる? 転ぶ?〉のシンコペね。この音型がドタバタ系楽曲に入るのは最高。
あと見逃せないのはラスサビのリズム捌き。クライマックスに向かってブラス隊が鳴らす「ズダッター、ズダッター」のリズム(以下ツイート中の①のこと)がまーーあ好きだわ。

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とにかく色々盛り放題で楽しさいっぱいのこの曲は、全自動分包機を思わせる。形は様々、ときに色付きの錠剤を一気に振り分け、スピーディにシールしてタラララ、と必要日数まとめて提供してくれる。図体こそデカいが、ちまっこい作業をサクサク行う働き者だ。
 

6. 退社後ツインテール
作詞・作編曲:λ
All programming:λ
Mixing Engineer:ちばたろう
吹いた
ここまでがっつりパロディされると笑うしかないなあ……。原曲が常に頭の中でうすーく鳴っているので、〈確定さ〉〈こんなの嫌だ〉などでメロディが跳ねたり反対側に進んだりして予想を崩されると慌てる。ほんと面白い。この感覚、Oriental Magnetic Yellowを聴いているときと似ている。
原曲ではaugでぱっぱらぱ~と登っていくところは♭9thに変化して、ものすごい辛酸舐めてます感が。メジャーに転じたサビ中にあっても、ちょっとなんか、目のクマを感じさせるというか。

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働き詰めの社畜さんには、ホルター心電計と傷を舐め合ってもらいたい。24時間働き続ける心臓の動きに異常がないか、健気に記録し続ける。あいにく心電計は、VTuberには生まれ変われないけれど。
 

7. ノーマニー?ノーマニー!
作詞:Sleeping Pillow
作曲:まくら
編曲:凜、まくら
Vocal:IA(Vocaloid programming:凜)
Mixing Engineer:凜
これ電子ドラッグや。IAちゃんになんて歌を。
 
曲としてはかなり気に入っている。サビ(〈わたしのお金ノーマネ〉のところ、ここサビかね?)の進行がツボにハマった。エレキの弾き伸ばしの上でメロディが跳躍するのが結構好きなのである。
あとはボンゴポコポコ。あそこ担当したい。サンバホイッスルとかも吹きたくなってしまうな。ピーピーポポーピーピーピポーポー

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聴いているだけで脳みそがぐるぐるしてしまうのでコイツは頭に直接刺激を与えてきている。修正型電気痙攣療法(m-ECT)で用いるパルス波治療器(商品名サイマトロン)に違いない……。
 

8. ガラスの月とリゴレット
作詞・作編曲:Nassan
Vocal:歌幡メイジ(UTAU)
Guitar:Nassan
Strings arrangement:まちだ.
かっっっこよ!
歌幡ちゃんの歌は初めて聴いたのだが、節回しが独特だ。ムード歌謡寄りなのかと思っていたが、こうしたメタルにも合うのか。イタリア語の母音がハッキリしているのもそう感じる要因のひとつだろうか。
それにしても、開幕の7拍子なんてすぐ霞むほどの変拍子祭り。プログレッシヴ・メタルは普段聴かないジャンルながら、随所に挟まるギター・ベースのユニゾンやら、シンセ(もしかしてエフェクターかけたギターかな?)のソロやら……すごい。めっちゃアツい。
これはストリングスアレンジも手が込んでいる。ゴリゴリ鳴っているエレキモノと、対比するように麗らかに流れる高音の弦。そのハーモニーが何とも言えず妖艶である。
最終盤に登場するピアノのパッセージも好き。

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興味本位で近寄ってきた者は寄せ付けない空気感。これは「要塞」とも称される内視鏡手術支援ロボット、ダ・ヴィンチ・サージカルシステムを連想させる。術者はコックピットの中で孤独だ。
 

9. Chasing a Dawnbreaker
作編曲:sat
Mixing Engineer:sat
とっても良い……。
コードの変化が少ないのにこれだけ気持ちが盛り上がるのは、音色とリズムの妙だ。他の曲の名前を出してしまって申し訳ないが、『とある妖の観測的美学』(原曲:芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend/編曲:八神将義(efs))が大好きな私には響く曲調である。比較しているのではない。本曲はインストということもあって、よりドラムスが深いところまで響いてきて好きだ。

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疾走感のあるエレクトロで、鳥になり空気を切り裂くような気分だ。形から翼状針にしよう。刺入すると血液がスーッと上がってくるし、その素早いイメージも曲に合う。臨床検査の専門誌で、翼状針の方が安全で、固定性が良く初心者にも推奨できるとする論文がまとまっていたことだし、最近は翼状針採血が主流なのではないか。
 

10. NeoKi ALarM
作編曲:hiiro
Mixing Engineer:hiiro
Voice:hoshimiya_toto
星宮ととさんのサンプリングボイス、めちゃかわじゃないっすか?
それを引き立てているのがコロコロと駆け上がるきらびやかなオケ。リバースも最高。ヴォーカルカットアップ的なアプローチだが、無加工の音声素材も混ざっていてキュート極まってる……。ほんと、こういう曲書ける方には憧れしかない。

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ちょっと夢現な感じもあるエレポップ、カラフルな印象を受けたので、最近のカワイイ色付きモジュールだ。歯科矯正で用いる輪ゴムみたいなパーツである。こんなのつけた子がベッドから「ん~~」と伸びしつつ起き上がってくるとか、なんか良いなあ。
 

11. xylitol
作編曲:masaki nomura
All programming:masaki nomura
マジで好き。何時間でも聴いていられる。
先端が撓って、スナップの効いたアタックが出来るマレット。頭は大きめでやや硬いくらいか。この曲を書いた方はグロッケンのことが大好きに違いない。私も叩きたいなこのリフ。
あとは「ピュイッ」と鳴っている音色や、ウォータードロップとはまた違う濃度の大きな水の音、全てがクリアだ。

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洒脱で爽やか、透明感があるのでこれはガラス製器具に違いない。なんとなく背が高いイメージもある。腰椎穿刺(ルンバール)で髄液圧を計測する際に使う、マノメータ(検圧管)で。髄液圧が高いといくつか上に重ねて使うことがあるが、固定のためのパーツがついていないので結構フラフラする。
 

12. Shining Star
作編曲:ののの
All programming:ののの
もはやMONACAの曲に慣らされた者たちにとってはこうした曲を書くことが当然なのかもしれないが、2番で手を変え品を変え、間奏後にリハーモナイズし、と次々に新しい顔を見せてくれる。そんな中で、変えないところは変えない、その安定感も魅力のひとつとなる。
あれだけ聴き慣れたはずなのに、やっぱりサビ頭の分数augってすごい衝撃的だわ……。

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がっしり作り込まれた進行。遊んでいる音選びの中にも、割と真面目な印象を受けた。バルフォア開創器のようにしっかり者なのだろう。術者の第三の腕、開創器。弁が3つあって見た目はファンキー。
 

13. Snow invitation
作詞・作曲:λ
編曲:kamakuran, λ
Vocal:なでちゃん
Piano:λ
Guitar:kamakuran
Strings arrangement:まちだ.
Mixing Engineer:ちばたろう
なでちゃん氏の歌声って明るいんだけど、それでいて粘度がしっかりあって、オケに張り付いているような気がしています。曲と手を繋いで全体の雰囲気を出すのが上手い。
ここだけの話、私がこの前歌ってみた動画を撮ったのは、彼の影響を多分に受けているわけで……。
 
しかし、さっき社畜だったのと同一人物の歌詞とは思えないなあ。自分は絶対書けない、こんなコロケーションが思い浮かばない。尊敬する。

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クリスマスってのは街全体が浮っついているので無条件にウキウキしてしまうわけだ。ウキウキするといえばポケット型超音波診断装置、いわゆるポータブルエコー。エコーを小脇に抱えて往診に行ける。これをウキウキすると言わずして何と言おう? ま、画像を読めるかは別問題だ。
 
 
14. ???(PRINCESS HIROKAWA)
作詞・作編曲:kamakuran
Vocal:なでちゃん
Piano:λ
Guitar:三島涼、kamakuran
Bass:はーら
Brass & Strings programming assistant:Tansa
Mixing Engineer:ちばたろう
 
えっ こわい
 
作曲家のファンソング作る界隈って怖くないっすか
 
Bメロはヴォコーダ通してるんかな? ブラス打ち込みなんかにもこだわりを感じるし、リスペクトの賜物であることは十分解る。歌詞も練られている。しかしなんだこれは、こわっ。や、褒めてる褒めてる。

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圧の強いこの一途さ。まるでリングカッター(緊急時指輪切断器)だ。マジで指輪を切ることだけを目的に作られているのだが、つまみをグリグリ回して円形の鋸を回転させるというハイパーアナログな器械で(電動のもあるが)、無心で回さないと硬い指輪は切れない。
 
 

1.5(next...?)f:id:I_verum43:20200510220717j:plain

1. 悩みごと!?
作詞・作編曲:まくら
All programming:まくら
Guitar solo:つくね
VOCALOID edit:まくら、凜
チップチューン風味のエレクトロ。とんでもないaugの使い方するなあ。
コジコジ』(さくらももこ)のようなヤバい空気も感じるのだが、しばらくそこに身を委ねていると不思議と気分が良くなってくるから妙なものだ。ふざけてるようで、ふざけてないのかな……いややっぱりふざけてるよね? あれー??

サビもホントにスルメのような進行で、〈回れ右〉でメジャーセブンスに開けていくのが快感な、気がする。これ合ってんのかな? ギソロカッコイイ~~

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奇妙な世界に迷い込んでしまったようなので、フレンツェル眼鏡を押し付けよう。眼振を観察する上では有用な器具なのだが、目だけが拡大されて映るので、ファニィな見た目になってしまう。
 

2. 二つの道
作詞・作編曲:Tonoyama
Vocal:へそ
短めのフレーズが吐息と共にふわっと放たれ、それを受け止めるオケの進行がまた優しいから、心にぽっ、ぽっと暖色のあかりが灯るような気になる。スネアの激しさとのメリハリがドロップにも活きているように思う。

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『二つの道』ということで、ここは鑷子しか無いだろう。柔らかな調子で誰も傷つけない塩梅ながら、心を掴んだら離さない。細めの血管を傷つけずに把持する、ドゥベーキー鑷子だろうか。
 

3. Augmentation
作編曲:Happiya
Synth Programming:Happiya
好きだなあ……。
技巧派プログレの香りがする。Casiopeaファンの私にはたまらん。
ベースが常に動いていたり、ところどころで拍の取りにくいシンコペが入ったりとテクニカルである。それでいて、これほどキャッチー。快晴の昼下がり、気持ち良い風を浴びながら聴きたいナンバーだ。

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このすっきり感を味わえるのは、ハイポアルコールだろうか。イソジンの色が落ちてさっぱりきれーい☆
 

4. 暁の砂浜に帆をかけて
作詞・作編曲:namaozi
Vocal:Sendaguinha
Guitar:namaozi
ま、まさにサウダージ……!
イントロからテクい。そして次第に入ってくるラテンパーカッションとブラス・セクションに心が躍る。ティンバルかタンボリムを引っ提げて、何も考えずにバックビートを奏でていたいな。全編ポルトガル語ver.なんかがあったならマジで聴きたすぎちゃう。みんなの顔が、片側だけ夕日に照らされている風景が脳裡に浮かぶようだ。

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ブラジリアンポップスを聴いて思い浮かぶ医療器具って難しいんだけど、連想ゲームで、ブラジリアンワックス→脱毛→レーザー→ルビーレーザー、かな……。レーザー治療にも色々あって、疾患によって用いられるレーザーが違うのでご注意を。
 

5. Awaking Arch
作詞・作編曲:掛川
Vocal:shiorin
Guitar:外舘大貴
ギターが弾ける方はこういう曲を書けるんかな? すごいな??
サビの2つ目♯Ⅳ、そして〈かけ上がる〉のメロディが、グサグサ刺さってくる。割と複雑で予想を裏切ってくるコードワークだ。溌剌とした歌声が憂いを吹き飛ばすよう。

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切り込んでくる鋭いギターも併せて、心の奥底まで光が差し込んでくるイメージ。というわけで、額帯鏡で。無影で照らしてくれるので、本当に明るい視野が取れる優れモノ。耳鼻科の先生しか使ってないけどね。
 


Why don't you eat MONACA? vol.2

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1. おはようモーニン!コンサート!
作編曲:あすみん
All programming:あすみん
ロックエレピ的な音がピッタリなんだよな。そして、コード次こっち行くだろ、メロはここで下降してほしい、と思ったところで本当にそう行く、まさに「MONACAファンは通じ合う」、教科書的楽曲かもしれない。
アルバム1曲目のインストとして程よい長さだからこそ、サビ後半に倍テンが入って引き締まってもいる。いやぁ良い。

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これは、医師なら誰でも持ってる(病棟の使ってる人もいるけど)ペンライトです。シンプルでベーシックだけれども、ここを通らないと始まらない。
 

2. ロス・アラモスに花束を!!
作詞・作編曲:Nassan
Vocal:妃苺
わー……すっごい……(呆然)
アバンどうした。Aメロもどうした。いやずっとどうしたんだこの曲は。
あの、私が「テロテロ系秀和」と呼ぶ楽曲群があって、そいつらをフルで初めて聴いたときの混乱と同種の嵐が脳内に吹き荒れている。
〈\ポイポイ/〉は可愛いし、〈倒錯なLOVEの真実に〉は低音域でかっこいいし、ラップパートはどちらの魅力もある。妃苺さん激推しだわこれ。

冷静に聴くと、サビの合いの手のハモメロがマジで素晴らしい。こんだけめちゃくちゃやってるのに、全体を通して、濁っていると感じる箇所や、違和感を覚えるパートは無いと言っていい。
MOSAIC.WAV的な電波アプローチも感じられるし、ちょこちょこ素直なロックらしき雰囲気も纏っていて、歌詞を見るとオマージュ元が色々と……。アウトロのプログロックはこれまた大好物。tricotとかを思わせますね。ところでベースはリッケンバッカーでございましょうか?

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ロス・アラモス研究所といえばデーモンコアやな。核ということで、核医学検査に用いられる99mTcをチョイスしましょう。どこのシンチグラフィを撮るかによって使う放射性同位体が違うから気をつけるんだぞ!
 

3. リトル・フューチャー・ファンファーレ
作詞:ふぁんしーめいど
作曲:まくら、Tansa
編曲:Tansa
Vocal:夏屋 角
Guitar:かに
Bass:原一生
Drums Programming:高橋涼ノ介
All Other Programming:Tansa
Vocal Recording:Groove Cook'in Studio
Vocal Recording Engineer:宮本旭
Vocal Edit:夏屋 角
Mixing Engineer:Tansa
 
商業譜だっけ???
 
イントロからTansaさんのストリングス炸裂。Bメロバックのトレモロなんかね、涙を喚起する力が強すぎる。
そしてサビよサビ。〈呼んでるんだ〉のメロディ! オクターブ跳躍してkey=E♭のドミナント(シ♭)で力強く伸ばす箇所ね。ヤバいわ。最高。実は北川勝利と沖井礼二の合作でした~、みたいなことない?
〈一握で十分だ 持てる分だけでいい 掴め!〉なんだこの歌詞泣ける……とてつもなく良い……。
あああああ短三度転調間奏うあああああ

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この曲は人間の人間らしさを惹起してくる。なにか大切なものを忘れてしまっている人に、それを思い出させてくれる。
そうですね、心臓の拍動が弱っちゃっている人に挿入して、その働きを圧力の面から助ける、大動脈バルーンパンピング(IABP)用バルーンカテーテルを進呈です。
 

4. Escape from the World! (feat.高峰伊織)
作詞:めがねこ v.s namaozi
作編曲:namaozi
Vocal:高峰伊織
Bass:原一生
Drums solo & Bongo solo:海野光洋
Guitar, T.sax & Programming:namaozi
ヴァーチャルで活動しているジャズボーカリストの高峰伊織さんじゃないっすかーーーー!??
ジャズ寄りのクラブ・ミュージック。精確に響いてくるキックに対して、スモーキィかつ人間味のあるギターリフ。高峰さんのシャウトも色気が凄い。ベースやシンセソロがあれだけ前に出てくるなんて一筋縄ではいかない。
なまおじさん、テナーエロいです。
 
歌詞も素晴らしくて、カ行/k/やタ行/t/の破裂音が頻発するから、ものっすごいハキハキして、リズミカルに、ダンサブルに聴こえるのだ。意味を見ても、連用中止を連発することで気だるさが表現されている。やっば。すこすこのすこ。ハオ。
ずっと腰から揺れてたわ……踊らされた……。

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それでは、ちょっとイリーガルでアングラな空気もある眼科領域から(暗室があるからというだけ)、光干渉断層計(OCT)でいかがだろうか。
 

5. 君はセンセーション
作詞:まさるまる(Re:fAce)
作曲:藤宮奏
編曲:λ
Vocal & Chorus:初音ミクV4X
Vocal Programming & Chorus arrangement:藤宮奏
Acoustic guitar:三島涼
Electric guitar, Drums & Mixing Engineer:Happiya
タイトルだけ見て「1986オメガトライブ?」と思ってしまった私は懺悔しなくてはいけない。
ミクにぴったりといったところか、甘酸っぱいガールズポップだ。アコーディオン系の音色がおもちゃ箱や遊園地を想起させ、ほんわか気分で横揺れしてしまう。
徒に技術に走ることなく、じっくり聴けば分かる程度のマイナーチェンジはしっかり施している。丁寧に作られているなぁ。

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照れて恥ずかしくって、ちょっと隠れたくって。気管切開孔を隠し、かつ湿度を保つためのエプロンガーゼの健気さに似てますね。
 

6. 恋人がいない時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです
作編曲:岡崎舜生
Programming:岡崎舜生
これは、「こんな強がりを言っているけど実は切ない」とも取れるし、「タイトル通りひとりを謳歌しているけどやっぱり雪はしんみりするね」とも取れる曲調。min7thで終止するし、やっぱり少し切ない感じなんじゃないのかな?
木管の音色チョイスがナイスでしっとりするう……。
それにしても、スレイベルの威力はすごい。あれが入るだけで途端に冬だもん。誰かにスレイベル使ってバリバリの夏曲を書いてほしい。

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なんとなく切ない感じがするケンキポーターを当ててみよう。たまに看護師さんに認識されてなかったりするケンキポーター。見た目に華がないケンキポーター。頑張れ。
 

7. Bitter boy (short ver.)
作編曲:まちだ.
作詞:芙雨
Vocal:釣田知里
まーた♯Ⅳだよ! 好きっっ!
スタンダードな8ビートのAメロから、突如としてゴージャスなワルツに。驚いちゃう。こうしたギミックもさることながら、個人的には〈Bitter boy〉のメロに最もキュンときましたね。
「びったぁぼーい♪」
はっっぅかわいいいいいいいい
 
あとはサビ後半のメロディにも涎が垂れてしまった。前半とは趣を変えて、ちょっと抑え気味の音程だ。あ~、〈すっぱくても しょっぱくても ノープロブレム〉の3連続/p/音もいいな~。

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可愛いだけで選ぶわ。ナースキャップ! 今は感染の温床になるということでほとんどの病院で廃止されているはずだが! 可愛いよな!?
 

8. JIBUN parade
作詞・作編曲:ANDY
Vocal:重音テト
曲も歌詞も変に飾り付けていないおかげで、鮮明に伝えたいことが浮き出ている感じだ。聴き手に刺さってくる。テトに歌わせていることも、心を揺らすファクタだろう。テトはね、成立の過程やキャラ設定とか考えると、いつもジンと来ちゃうんだよね。

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結構グサッと来る感覚からすると、20Gの直針か。曲調がほんのり甘いので、18Gほど太くはない。といっても、22Gの留置針だとdynamic CT撮るのには不安が残る。うん、20Gだな。
 

9. いつまでも
作詞・作編曲:NO.1P
Vocal:あかつき姉
Vocal Recording Engineer:Hiroki Hayashi
このくらいのテンポで、柔らかく大団円感を出すのって、それほど簡単じゃないと思う。軽めのドラムセットと、恐らくトライアングルミュートのビート、あとはヴォーカルの声質。間奏で入ってくる中音域のブラスも超良い。ボロディンとかそこら辺の影響かもしれないが、広大な草原を想起させるのだ。

そうそう! 草原で手を広げて歌っている白ワンピースの女性、それを上空からドローン撮影している感じ!

エレキギターの音色も穏やか。世界平和を願うメロディ。

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誰もを包み込む、暖かな揺り籠。そしてその温もりは、時空を超えて誰かに届いていく。もうこれは、新鮮凍結血漿FFP)融解装置だ。
ほんとにほんとに、溜め息の出るほどの名曲だと思う。歌い継いでいきたい。
 
 

以上、ジャンルは様々ながら、確かにどの曲にも恐ろしいまでに響いてくる部分があって、同じ曲や同じ作曲家を好いているな、重なる部分があるな、と感じさせてくれた。
 
私も曲書きたいなあ……1ヶ月くらい年休取らないとなあ……。