イルリキウムです。
さて。『灼熱の卓球娘』という作品をご存知だろうか。
全く聞いたことがない方はとりあえず各種百科事典サービスを参照して。
・Pixiv百科事典
dic.pixiv.net
・Wikipedia
ja.wikipedia.org
・ニコニコ大百科
dic.nicovideo.jp
私は、この作品がそれはもう大好きである。
・原作漫画を揃え、
・アニメを毎話リアタイ視聴し、その円盤を揃え、
・主題歌やキャラソンのCDを揃え、かつリリイベにも足を運び、
・ライブイベントに昼夜足を運び、かつそのDVDも購入し、
・作者の朝野やぐらさんのTwitterをフォローする(朝野やぐら@灼熱の卓球娘1~7巻 発売中 (@asano_yagura) | Twitter)
ここまで網羅しているのは、唯一『灼熱の卓球娘』だけなのだ。
アニオタと呼ばれる人種はこのくらい当然のようにやってのけるが、私はたかだか「アニメ関係の音楽オタク」くらいのものであり、こんなにひとつの作品にお熱になるのは異常事態と言ってよい。
きっかけは、ファンである声優ユニット・Wake Up, Girls! がタイアップとして主題歌を担当し、メンバーの一部がメインの役どころを演じていたことだが、
作品自体の魅力にどんどんのめり込んでいくのに、そう時間はかからなかった。
そして、音楽オタクとしてはMONACAが音楽担当を務めていたことも見逃せなかった。
息をするように、当時の私はキャラソンの感想を書きつけ、友人に送りつけた。迷惑。
この『キャラソン紹介』は、実はpdfの形式で公開している。
そして後日、挿入歌『V字上昇Victory』のレビューも制作している。
本稿では、これらを僅かに推敲し再掲したいと思う。
『灼熱の卓球娘キャラソン紹介①』(作成:2017年1月)
手掛けているのは、なんとMONACA期待の新人作曲家、瀬尾祥太郎さん。2015年に入社して、今回の大抜擢である。
田中さんより毒気が無くフレッシュで、アコースティックな石濱さんに似ているかな?
グロッケンの使い所や間奏のギターソロの直前に入るピアノの同音連打などは、まさにモナカサウンド。とても法学部出身とは思えない。
そうそう、エレキギターのカッコ良さはひとえに後藤貴徳さんのおかげです。わぐちゃん含め、モナカサウンドの一翼を担うギタリストなのだ。グロッケンについても更に突っ込むと、煌めくような金属音なのよね。メタルマレットのような金属同士のぶつかりまではいかない、少し深みと重みもある音。ベークライトかアセタールのマレットなのかな……。こだわりが感じられる。
聴きどころが多すぎるけど、一つひとつ参りましょう。
まずは2人の〈さぁ さぁ……さぁ! ヨッシャ、ヨー!〉の掛け声。よく聴くと右左が目まぐるしく入れ替わっていて、カメラが卓球台の周りを回っているイメージを催す。
イントロよりもアウトロの方で明らかに息が上がっているのに加えて、ピンポン球の音も重なってきていて、さらにイントロで伸ばしていた最後の「ヨー!」は曲終わりで「ヨゥッ!」と鋭くカットアウトされている。2人が汗だくになりながらラリーをしている情景がありありと目に浮かぶのである。
2人を比較すると、こよりは大好きなあがりちゃんと一緒に卓球ができることが楽しくて仕方がない、という上気した声だし、あがりはストイックに基礎トレーニングに取り組んでいながらも、こよりとの卓球にドキドキと嬉しさが隠しきれないという雰囲気の声で……! ああくっそ! 可愛すぎるだろお前らアツアツか! 結婚しろー!
ちなみに、この掛け声がめちゃくちゃ好きという想いを、お渡し会で花守さん本人にぶつけたところ、「伝わった!? よかったあ、めっちゃ録り直した笑」とのことだった。「美海さんのアフレコが先にあった」とトークで言っていたので、それに引っ張られるところもあったのかな。やっぱり演者も体当たりの熱血でやってくれている。
花守さんは、卓球娘イベでいつもこより愛、作品愛が止まらなくなっちゃって「灼熱の尺取り娘」とか「尺取りの卓球娘」とか呼ばれてるけど、そういう声優さん好きっす。
次。間奏など随所に顔を出すピンポン球。どうやって収録しているのか、人工なのか分からないが、ラリー感を出すために僅かにタイミングをズラしているのが憎い。
台でバウンドしてからラケットに当たるまでの距離の方が、ラケットから相手コートの台に弾むまでの距離よりも短いため、ラリーというのはウインナーワルツのような、付点のリズムになるのである。タタン、タタン。ひゃー、心地よい。
あと、じっくり聴くと、間奏明けは音がセンターにあり、今までのと質が異なる。もしかしてどっちか強く打ち込んだのかな? EDのときみたいにキャッキャウフフでドキドキビリビリなのかな? なんて妄想膨らみますね!
次。サビ終わりの絡みが最高かよ。〈声があふれてる〉〈かけ声は〉の部分のことね。4回あるけど、1番ラストと大サビ2回目はあがりが先、2番ラストと大サビ1回目はこよりが先なの。この主導権争いですよもう……! どっちが先でもどっちも嬉しい、みたいな! 熱く重なり合うんですよね、わかります!
サビについてはもう一つ。1番を聴いてみましょう。
下が正解。でも、よくあるサビ終わりは上なんです。
下のようなリズムにすることによる効果は凄まじく、間奏との間が小節の区切りでスッパリ切れることによって、爽快なスマッシュのようなイメージを持たせている。
また、上では〈響いてる〉の前が間延びしてしまうけど、下ではスピーディだ。
2人の、卓球以外のことなんて目に入ってないような熱中具合を表しているような気がする。素晴らしい。
只野さんの歌詞も良いんだよコレが。「放課後ラバー」からして、loverとrubberを掛けているってのは言うまでもないかしら。
みにゃみが、「〈ヒロインはエース〉って歌詞があがりの向上心や負けん気の強さを示していて好き」って話をしてたんだけど、まさしく”キャラクタらしさ”ってのがビシビシ出ている。只野さんどんだけ読み込んでるんでしょう、忙しいはずなのにスゴない?
私が好きな歌詞は、2番こよりちゃんの〈届いて! 気持ちいい全身全霊で〉ってところかな。その直前、曲想が一旦落ち着いて〈きっと対戦しなきゃ ずっと出逢えなかった〉ってある。まさにラケットを握って、転校当初のことを思い出しているこよりちゃんで、気持ちを乗せてあがりと打ち合ううちに、心開いていって、あーーー!! ドキドキするーーっ! 届けえーー!! ってなっちゃうわけですよ神としか言いようがない。
落ちサビ頭の〈おそろい 汗とユニフォーム〉ってのもいい。ユニフォームだけじゃなくて、汗もおそろいなんですよっていう。2人で一緒に汗かいてるんですよっていう。実はCDジャケットの2人、かなり汗かいてるのね! 服が透けるほどじゃないけど、汗の粒が飛んだり顔に汗の筋が出来てたりして。ダブルスソングシリーズ全て通して、全選手が汗を滴らせているってのはまさしく灼熱なのです!
キャラソンを出した上でイベントがあるってことは、当然ライブで全部やってくれる前提で日々を生きていますけど、この〈さぁ さぁ〉が聞こえてきたら高まりすぎた挙句に叫声を上げてそれだけで喉を潰す可能性がある。
(※2020年5月現在、ライブで聴くという夢は叶っていない)
c/wの雀が原中学校校歌ですけど、この2人が一番しっとり歌ってるように聴こえるんだよなあ。一応中2の設定のはずでは……。自分の中学校の校歌をここまで「故郷の山河を思い出して」的なトーンで歌い切るのね、っていう。
最近は、こういったコードワークの校歌なんてのもたまに聞かれるから、それほど違和感はなくなってきましたが、雀が原中学校はいつ創立かが気になる。というか関係ないけど、卓球部のために建物一棟あるって、かなり優遇されてない?
BPM ≒152。
カッティング気味のギターと軽快なブラスが弾む、4つ打ちのクールなナンバー。2人の個性が光る静かな立ち上がりのAメロから、頭打ちとシンコペのコンビネーションが渋いBメロ、そして盛り上がりが最高潮となるサビ、こんな曲を書かれてしまっては、今後瀬尾さんを激推ししていくしかないな!
Bメロで鳴るシロフォンとグロッケンの具合がこれまた絶品で、ハナビとほくとのちょこまかとした雰囲気が良く出ている。
正直、この2人はもっとフェミニンなふわっとした曲を歌うと思っていた。ハナビのソロならばピッチの速いチアフルな曲も当然可能性があったが、ほくとと組むとなると話が違ってくるだろう、と。
これはまりんかとくわちゃんも同じように思っていたらしく、こんなカッコいい曲を歌うことになるとは、と驚いたと同時に、まりんかは「ほくとの雰囲気をどう出すのだろう」とくわちゃんにある種期待していたようである。いやもう、くわちゃん、エクセレントです。まりんかもバッチリ可愛いです。というかこの2人完璧だわ。小学生の頃からの付き合いだし、お互いのことよく分かってるし、ホントにホットとクールでハマってるんだよな! いいから早く結婚しろーー!
4曲が出揃ったときの第一印象では、この「ミッションインパクト」がトップの評価です。
それは歌声と曲調の親和性によるものもあるし、私の重視するリズム隊の練られ方もだし、歌詞から感じるラブラブさも超良いしで。サビの和声の動きは、割とJ-POPやアニソンで見られる動きではあるんだけど、曲を支配する縦ノリとシンコペのせめぎ合いが独特で、全く別物のコードの流れに聴こえてくる。あとはスカとかでも使われるブラスセクションの輝きがなんとも言えない。多分、8分の裏拍でスネアを入れたらスカになっちゃうよ。
こういった曲で重要なのがフレーズ間のブリッジの役割を果たす決めのリズム。Aメロのほくととハナビの間に挟まるものが相当するが、1番と2番で変えてくる辺りは、「分かってるう!」の一言。下譜の上が1番、下が2番になる。
こうして見ると、頭の音符1つだけが16分後ろにズレているだけのマイナーチェンジながら、ノリとしてのビートの色はかなり異なる気がする。
上はシンコペーションとしてはスタンダードな休符2:音符1の繰り返しだが、下は開始が詰まっている分、前のめりになった感じがある。1番から連なってきた勢いのまま突き進む、そんなイメージだろうか。
間奏から2番Aメロに入るところのパターンも前奏より音数が多くて、考えて作られていることが分かる。MONACAが最強作曲家集団である所以は、同一メロや同一リズムパターンで満足しない曲作りにもあるわけで、こういうところ手を抜いちゃう作編曲はダメっす(断言)。
歌詞については語りたいことがいっぱいあるんだよ……! 只野さんどんだけだよ……、原作者と1週間一緒に暮らしたか、あるいはもはや原作者じゃないとこんな歌詞書けないよ!
もう最初っから見ていこう。〈ひとめ見ればわかるよ〉なんて可愛らしい口調で〈この戦局を制するのは情報を持つ側〉とか参謀キャラめいたことを言うほくと。
実はここで既にひとつサプライズを受けてしまった私です。というのも、前に前にグイグイ来るハナビが、先にメインパートを取ると思っていたわけ。しかしそれを「まあ落ち着いて、ハナビ。相手をよく見てから行くよ」って抑えるように、曲に入っていく。それを受けて、〈先手必勝だよね〉と、自分のセールスポイントを全面に押し出していくハナビ。2人の間で頷きが交わされている様子が見えるー!
こういったリズム感のある曲は、日本語だけだとどうしてもベタっとした詩になりがちで、〈深層までプロファイル〉とか〈なかよしタイムにしよう〉とか外来語を挟むことで締まりが生まれるのよね。
〈ミッション!〉の部分は絶対的コール箇所。そしてこれを契機に、戦況は加速していく。
ほくとのプロファイリング〈ping pong pinkリボンが好きなんだね〉は冷静そのもので、くわちゃんがこの曲にほくとをアジャストしてきているのは感動モノ。
何せ、普段はギャグを披露しては現場を変な空気にする、スベリ芸がお得意のあわわ系芸人・桑原由気である。メイドラゴンのトールの方が遥かに本人に近くて、ほくとなんて似ても似つかない。そんなくわちゃんの! 声が! ほくと! それだけで感涙に咽ぶ。
ほくとの魅力は、沈着とした振舞いと「~だね」「~よ」という柔らかい語尾とが手を結んだところにあるのですよ。「○○が好きなんだね」なんて言われたら「は、はいぃ! そうですぅ! ブヒィ」ってひれ伏すしかないじゃないですか!
一方、〈ぎゅぎゅぎゅっと つかんじゃうよメンタル〉とハナビ。この〈メンタル〉って歌ってるところのまりんかが可愛すぎて100万回死んだんですけど、でもハナビが「メンタルを掴んじゃう」って珍しいことを言ってません? 前陣速攻で私が卓上の支配権を握るぞ、という意思表示なのか、あるいは、ほくとの目がお前を丸裸にしちゃうぞー! という信頼プレイなのか。
どちらにしてもこの2人、歌詞の中ではダブルスを組んでいるかのような物言い。〈私がチョイス からのゴーゴー!〉なんてのもそうで、「こっちは球を見極めるから、ハナビが決めてね」「おー、任せとけー!」ってな感じで、互いが互いを分かっているからこそ出る言葉に聞こえてくる。
実際ダブルスを組んでいる先輩2人は、プレイスタイル面で互いの弱点を補完するように出来上がった信頼関係なのに対して、ほくととハナビには卓球をきっかけとして世界一の友達になった経緯があって、それ故に、信頼関係を築こうという意思の介在しないところで、自然に構築された絆みたいなものがある。
2番でハナビの口から〈進め 背中は守る〉〈最初からね知っていたよ すごさも寂しさも〉って言葉が出てきて、しかも弱気な感じの声。ちょっとドキッとするけど、今度はほくとが〈私たちはまだ負けたりはしない〉って立ち上がる。
くわちゃんは「ほくとはハナビのことになると感情が分かり易い」って分析していたけど、そういうほくとが歌詞には表現されているし、ほくとを誰より理解したくわちゃんだから、ハナビに向ける愛情も声に乗るんだろうな。
ハナビは誰にでも感情を隠そうとしないけど、ほくとのこととなると、愛情故に、脆い部分も出てしまう。まりんかもバカテンションで演じているわけじゃない。〈強さ それも正義だ〉はハナビで、〈正義 それも強さだ〉はほくとの言葉なのかな……? いや、「強さが正義」はほくとも言いそうだな。ま、結局〈強い正義〉というものに集約されるんだけど、その「強さ」も「正義」も2人の心の繋がりが生んでいて、この曲は〈ホット×クール〉な2人を存分に味わえる珠玉の一曲。
今回リリースされた4曲のどれも好きだが、私はこの曲を白眉としたい。
BPM ≒128。
ジャケットが狂おしいほど好き。ムネムネならなんでも可愛いけど、表情の中では、眉が逆ハの字になって勇ましさを帯びた笑顔ってのが特に魅力的だと思っていて、試合中に見られることが多い。そう! まさにこのジャケットのような! そして胸と太もも! しっかりフレームインしてます! キルカの表情も不敵で格好良い! 先輩コンビが2年生4人に比べて、かなり大人な空気を纏っているのが素敵じゃないですか。
曲は石濱さん。洒脱な音回しに乗せたガールズポップスがお得意ながら、今回のようなゴリゴリのEDMも書いちゃう人お方です。
最初に聴いたとき、アイカツの「KIRA☆Power」と近いと感じたけど、きっとEDMって結構な割合で似てるんだわ。でもエレクトロになること自体かなり予想外。ダブルスソングシリーズ、予想を超えてくる。テンポが130程度って点はすごくしっくり来る。
この2人があまりに自然に歌い流していて、前2曲ほどアツく語ろうという気持ちにならないのが自分でも不思議だけど、やっぱり強者の余裕みたいなものがあるんだよね。
さっきハナビ×ほくとと比較して「互いの弱点を」とか言ったけど、あくまでそれはきっかけであって、今はもう既に、互いの息遣いを深い次元で読めるようになっている、完成したチームなわけで。
だから、卓球が好き! とか、分かりきったことは敢えて言わない。〈全国までの夢〉って、もっと先を見据えているし、〈いつの間にか卒業する私たち〉って、近い将来のことも考え始めているし、〈おのれの弱さ〉とも向き合っている。部活は〈自分探し〉の手段で〈社会経験〉のファーストステップとも思っている。
やっぱり、ムネムネとキルカの頭には、卓球ばかりではないのかもしれないな、と考えてしまう。
特にキルカは、後輩たちを見守る優しい目と、自分たちの実力を計る冷静な目とを持ち合わせていて、それに加えて自分自身の未来を見てもいる。東城さんのストレートな歌声が響いてくる。がむしゃらに卓球に打ち込む2年生たちより熱中していないのかというと全くそうではないけど、卓球を通して見えている世界は全く異質なのかも。まあ、2年生共に引っ張られていってる部分もあるっぽいけどね。
ところで、雀が原の6人の中で推しを考えたとき、まりんかくわちゃんのセットと今村さんとでちょうど気持ちが半々くらいになっているのです。
今村さんは可愛い。マジで。
今村さんの八重歯はななみんにも引けを取らないキュートさだし、今村さんの太ももは音無小鳥さんとタイマンを張れるほど。本人は自虐で「ムネムネが羨ましい」「私はムネムネではない」とかよく洩らしているけど。ついでに卓球経験者ですからね。イベントの卓球ユニフォーム姿が似合っている。時折見せるマジモードも、イケメンピースも最高極まってますね。えっ、というか、今村さんが卓球部だったころ、毎日それを拝んでいた男子部員がいるってこと? は? 何?
そうだ。ムネムネの〈ドアは閉めた イイネ〉ってどういう意味だろう。キルカと何してるんだろう。卓球か、そうか。
作詞:吉田詩織
作曲:永塚健登
それはともあれ、石榴可愛い。石榴いい顔。くるりはいつも通りキマっちゃってる。
石榴よりくるりの方が恵体なのは、原作やアニメをしっかり見ていると分かるけど、うっかり逆のイメージを持つ人も多いんだよね(私も最初はそうでした)。
このジャケットを見れば分かっていただけますかね? 身長差もあるんですよ。いやー、石榴可愛い。シンプルな白リボンが良いよね。あと、このジャケットにあがりの髪とラケットが写り込んでいることで、2枚で1枚絵だということが分かる仕様。気付いた人から楽しめる仕様かと思ったら、公式twitterがupしてましたね。どうやら東城さんからせがまれたらしく。
作曲は永塚健登さん。まだ世に出ている曲の数は少ないけど、どっかで見たことあるなと思ったら、まゆしぃの「走り出したencore」の人でした。曲想めっちゃ違うやんけ! しかもベーシストなの? それにしてはベースがそんなに目立たない曲を書きますね。もしかしたら目立つの嫌い?
ただ、Bメロからサビはそれほど官能的でもない。結局はこの2人も、あがりとこよりの魔の手(卓球好き好き&百合百合オーラ)に堕ちて、真っ直ぐな歌詞と真っ直ぐなメロディを歌わざるを得なかったのかもしれないね? ツーバスドコドコ。
ライブではコールを打つ箇所になるかもしれないけれど、〈デス!〉〈デスデス!〉〈デス?〉の箇所はひっじょーに可愛い。
石榴が一生懸命「デス!」とか言ってるのは、可愛いではなくて何だというのでしょう。「石榴は私の言うとおりに歌うといいデス」「うん、くるり、分かったよ。頑張るぞー!」「ここで『デス』と合いの手を入れるデス」「えー、難しいよお」うひょー! 可愛いーー!
デスデス言ってると、シンフォギアの暁切歌ちゃんを思い出します(あの子のデスはdeathだけど)。デスはきんモザの九条カレンちゃんだと言い張って聞かない友人もいる。そういやハナヤマタのハナ・N・フォンテーンスタンドとかいう田中美海も、デスデス言ってたような。語尾で個性を出すのもそろそろ限界が来ているのかしら。まだまだ開拓されていない表現もあるだろうけど。ってか外人がデスデス言うのは仕方ないのか、片言らしさを出すためか。本筋からどんどん逸れていく。
歌詞は、永塚さんと同じハイキックエンタテイメント所属の吉田詩織さん。WUGキャラソン第2弾の詞を全て担当しており、1クール30本近くアニメを鑑賞するという強者。仕事なんだか趣味なんだか。
吉田さんは、歌手(キャラクタ)の気持ちを乗せやすい歌詞を書くイメージがあるけど、その反面、ちょっとばかり面白味に欠けるという感じもあったりなかったり。同じメロディに畑亜貴が歌詞をつけたらどうなるのか興味がある。
まあ、何にせよ、くるりと石榴がマイクを握って、仲良さそうに歌っている様子を想像するだけで、心が満たされるからいいのデス。
『V字上昇Victory感想』(作成:2018年7月)
シングル『灼熱スイッチ』(2016年11月25日リリース)の
カップリング曲。
当時、表題曲の異質さについては度々話題になっていたため、
カップリングはどんな曲で来るのだろう、と発売前より楽しみにしていた。『灼熱スイッチ』の雰囲気と対極にあるようなバラード系か、こより&あがりのデュエットでガールズポップスか……。
蓋を開けてみたらとんでもない。
定常で精確なテンポ感。プログレ的要素も含んだ、硬質なロックチューン。度肝を抜かれた。
そして、あまりに気に入ってしまった。我が
iTunes上での再生回数によれば、『灼熱スイッチ』の優に倍は聴いている。
楽曲・歌詞・ライヴパフォーマンスの面から、つらつらと感想を綴っていこう。
まず、一瞬のイントロ。旋風こより(
花守ゆみり)のブレスが耳を撫でる。
椎名林檎の『ここでキスして。』である(ちなみに、作曲の
亀田誠治は「元々イントロが付いていた」と明かしていた)。
当該曲での冒頭ブレスは、椎名のアカペラを際立たせ、ヴォー
カリストとしての高い能力と魅力を見せつけるために存分に役立っていた。
一方、本曲で聴かれる花守のブレスは、緊迫したものではなく、柔和な導入である。6人の心を合わせると同時に、聴く者の心の準備を待って、曲に誘う役割を持っているように感じられる。
『ここでキスして。』では半拍、『V字上昇~』では1拍をブレスに使っているという点でも、その違いは明確であろう。
Aメロの譜割りは、
キャラクタの性格を反映したようなワードチョイスになっており、感情を揺さぶってくる。〈戦友〉というのは、いかにも負けん気の強いあがりらしいし、〈きみのスキマ 私が埋める〉は、冷静な中に、仲間への熱い想いを秘めたほくとの言葉として納得がいく。
6人がそれぞれワンフレーズ歌ったところで、ステージでは、みにゃみ
とまりんかが手を握って中央に出てくる。どことなく黄色みを感じるね。
〈turn turn〉という合いの手を合図に、今度は逆順で6人がソロを取っていく点にも注目。今村さんの優しい綿のような歌声、東城さんの深くコクのある歌声、それぞれ味わいがあって素晴らしい。
オケの方に耳を向けると、冒頭部分はかなり音数が少ない。左右にパンされたギターは、長7度離れた音を押さえていて不思議な浮遊感を催す。しかし、全ての音がメジャースケールの中で完結していて、鬩ぎ合いつつも調和を保っている。
Aメロはこのまま、
サブドミナントとトニックのメジャーセブンスでグイグイ押していくのだが、展開としては、ピンポン球の音とグロッケンの細い装飾から、ベースが入り、
リードギターのリフにポコポコとした電子音のハモりが重なる。
そして
ハイハットロールの
フィルインから、16分の裏拍でキメが入ってくる。この辺りになると、タイトなリズムが曲を支配し、基本は4ビートながら、裏16分の息もつかせぬアクセントが憎い。
〈turn turn〉のバックで忙しなく上下に動くギターで少しサプライズ。小節頭に、実音でラ♯、つまり第4音の半音上をぶつけてきているのだ。すなわちリディアン・スケールの音型で、〈turn turn〉のハモりもそれに合わせている。「おや?」と耳を”引く”スパイスである。
Bメロの〈1・2・3‥〉は、回を追うごとにハモりが増していき、最終的に上下で主旋律を挟む形になる。【Ⅵm→Ⅶm-5→Ⅰ】というダイアトニック・トライアドである。この後ろで鳴っているベースを聴いていただきたいのだが、3回とも異なるパターンを弾いているのは面白い。
その直後〈みんなで さぁいこう〉はベース音が♯Ⅰ(実音でファ)を伸ばしているため、ハモりも影響を受けている点に注意されたい。少し
エスニックな響きになる。
この曲をリズムありきの作品にしていない重要なファクタが、サビである。厳格なシェイク・ビートに乗せ、
リードギターが単音を掻き鳴らす。音程の切り替わるタイミングを小節の変わるタイミングと1拍ズラしていることで、切れ目なく連なる様相を呈する。
ベースや2ndギターも割合伸ばしっぱなしで、メロディも緩やかに進行するため、感情を上手く抑えられる。ライヴでは、澄まし顔で歌っていたAメロとはうって変わって、満面の笑顔で手を振る6人が極めて印象的であった。A, Bメロでホップするような細かいパッセージ、転じてサビでは広がりを持たせる。
大石昌良氏なども、こういった曲作りが得意なイメージがある。
サビと2番を結ぶ4小節がこれまた絶品。豪快に押し流すロック的なアプローチだ。
2番Aメロではハモりが加わり、1番とは違ったフレーズも現れる。更にBメロの展開も異なっており、極めつけは、サビに入らず間奏に行ってしまうのだ。後半はこうした「予想外の展開」がいくつか待ち構えており気が抜けない。
ラスサビ後半には、今まで影も形も無かった8ビートが倍テンとしてはっきりと出現し、そのままの流れでオープン
ハイハットの連打!
それでもヴォーカルはこの疾走感に流されることなく、あくまで長い
音価で言葉を紡ぐ。〈ハート 染めた約束〉〈マイナスからのVictory〉。この2行だけでも、通底するスポ根の中に紛れる
パステルトーンの雰囲気を感じることができて、温かい気持ちになる。
この曲の
BPMはおよそ120。通してブレることなく、踏みしめるように進んでいく。ところで『灼熱スイッチ』の
BPMはおよそ203と、80以上も開いている。楽器群の構成は大きく変わらないものの、このテンポ差が曲のタッチを変えているのだ。
共通点は、楽器以外にもいくつかある。一つに、どちらの曲も転調をしていないのである。彼女たちの真っ直ぐさを示しているものだとすれば、そのアツさに震えるしかない。
また、どちらの曲にもピンポン球の音がサンプリングされて効果的に用いられているが、一部でそのリズムパターンが酷似しているのだ。
譜例の上は『V字上昇~』のAメロ。下は『灼熱スイッチ』のAメロである。
こう比較すると、実感としてのテンポは、
BPMほど開いて感じない可能性に気付く。『V字上昇~』のAメロが16分音符主体であることも大きく寄与しているだろうが……。
これだけの完成度を誇る楽曲が、まさかアニメで流れないなんてことは無かろう、と期待しつつ、CDリリース後の放送を観ていたのを思い出す。
最終話・第十二球Bパート。遂にそのときはやってきた。
アイキャッチの1枚絵に被さるように流れてきた、『V字上昇~』! いやもうホントありがとうございます……!
そうなんだよね、この曲結局、練習風景とかが一番合うわけです。『灼熱スイッチ』は試合向き。
それにしても、披露された回数はかなり少ないように思う。こんな良曲を。みなさんもっと聴いてください!