論理の感情武装

PDFに短し、画像ツイートに長し

それでは、2022年10月のハイライト映像をお届けします。

こんにちは。マシンガンオヤジギャガー小児科医でおなじみのイルリキウムです。

 

しかし、例えば「助かるわ。あらいぐまタスカル」とか「発作的に出ちゃう。発作マグナ」みたいなのは、"オヤジギャグ"と言って良いんですかね。なんか、この言葉には、周囲が辟易しているのにしつこく言ってくる、というような否定的ニュアンスが付き纏っているように感じます。そういうのではなく、さらっと小声で一発しか言わないやつなんですよ。ある意味、口癖であり、発作です。発作マグナ。

"ダジャレ"にはもう少し文脈の合致性やストーリィ内の引っ掛けがあって然るべきだし(ex. アルミ缶の上にある蜜柑、暗い中でクライミングなど)、押韻というほど芸術的なものではないので……。何か良い表現はないでしょうか。

 

「オヤジギャグ」に相当するモノを指す語を調べてみると、英語でdad joke、韓国語で아재 개그、フランス語でblague de papa、スウェーデン語でpappaskämt、ポルトガル語でpiada de tiozãoと表現するらしい。どこかを端に発した借用かもしれませんが、どのお国でもおっさんの言うことは似ているってなわけです。

 

先月の振り返り記事が局所的に好評だったので、10月もサクッと振り返ってみることにします。

あと2ヶ月で今年が終わるということを信じたくないので、過去を見て気を紛らわせようとしています。過去過去。カコン。鹿威し。

 

 

猫カフェ

休日の当直明けに猫カフェへ行った。

突然だが、私は「人間語を喋らない生物」を総じて好まない。ルールの確立されたコミュニケーションツールが存在しない相手とは気持ちを通わすべくもない。したがって、私は動物園に行ってもパネルに書かれている学名を見てヘラヘラするのみである。ちなみにハシビロコウの学名って知ってます? Balaeniceps rexっていうんですけど、balaeni-はballaena「クジラ」から来ていて、cepsは言わずと知れた「頭」、rexはティラノサウルスでおなじみで「王様」という意味ですよね、クジラ頭の王、ってことなんですよあれクジラに見えたんですね、和名の「嘴広鸛」の方が圧倒的にセンスがあると思いませんか、そういえばこの学名、B. rexって略せますけど、ティラノサウルスにもボブさんが見つけたから「B-rex」という愛称で呼ばれるやつがいてですね、いや私は全然恐竜には興味ありませんしなんならハシビロコウにも興味ありませんけどなにか

 

しかしこの日は、今までにやったことのないチャレンジをしたくなる日であった。そして読みたい本もあった。

のんびり本を読めて、かつ今まで行ったことのない場所として、何度か前を通りがかっていた猫カフェに白羽の矢が立ったのである。

 

スピン(栞紐)に狙いを定めるネコ 品種は知らん

私の少し前にはカップルが、私の後ろからは女子高生の3人組が控えており、やはり猫カフェというのはそういうきゃぴっとした場所か、と慄きつつ入店すると、いかつい兄ちゃん2人組がボードゲームをやって猫の興味を釣っていた。こわっ。人は見かけによらないの典型例だが実際見るとこわっ。お前らみたいな見た目の奴は駅前で水商売に女の子たちを勧誘してるタイプのアレだろ。こわいことすんなよ。

 

ドリンクバーとトイレは、ネコには開けにくいタイプの扉の向こう側にあり、空間管理がなされている。私はぶどうジュースを1杯注ぎ、部屋を見渡せる端っこに座った。床に体育座りをし、背中はブロック型のソフト椅子に委ねる格好だ。

20分くらいそのまま読書をしていたのだが、風雲急を告げる。私の立てた足の間にするすると入ってくる猫がいたのだ。どうしたどうした。すると、持っていたハードカバー本が下方へ引っ張られた! キャーーー!!!

無意識に垂れ下げていた栞紐を猫に引っ張られたのである。ぷらぷらするそれが、猫じゃらしのように、何らかの本能を刺激したのだろう。予想外だった。

 

家の近くで見かける野良猫たちは人の姿を見るとドドンパのごとき初速で逃げ出すのに、違うものだな、と思いながら、この猫としばらく遊んでみた。これで日本語が喋れたら可愛いかもしれないけどなぁ(想像したら可愛くなかった)。

 

 

漢字ミュージアム

京都は祇園に、「漢検漢字博物館・図書館」、通称・漢字ミュージアムという施設が存在する。2016年にできたばかりの施設で、一度足を運んでみたいと思っていたが、行く機会を得た。

彼女が一緒にいたのだが、入口ゲートを通ってすぐの場所に掲げられている、協賛や協力者のプレートの前で、「あっ、阿辻さん笹原さん……」などと知っている漢字業界の有名人の名前を見つけてはほくほくしたり、「鑁阿寺の鑁(バン)ってどういう意味やねん」と知らない漢字を調べ始めてしまったりしたので、この全く展示物として扱われているわけではないプレートの前で10分を費やした

www.kanjimuseum.kyoto

この博物館の見どころは、何といっても"漢字5万字タワー"である。『大漢和辞典』に収録されている親字およそ5万字が、エレベータータワーの外壁にびっしり印字してあるのだ。所狭しと。まるで耳なし芳一の経文のごとくに。

ほらもうこれよこれ

家に5万字ポスターがあり、実質は同じものなのだが、このタワーの方はランダムに並べられているという点で一線を画している。楽しさが違う。知らない漢字の隣に、部首も画数も違う、何の関わりもなさそうな別の知らない漢字が鎮座まします。へへへ……じゅる(流涎)

2人揃ってこのタワーを舐め回すように読んでいたが、どうやら周囲の来館者はこのタワーを読む物と捉えていないようで、「あっ俺の名前の漢字あった」などと下らん遊戯に興じている。漢字ミュージアムというからには、漢字オタクが集まるものかと思っていた。決してそうではないようだ。本当に老若男女問わず来館している印象で、これには建てた側もニッコリであろう。

 

なお、最もテンションが上がったのは、私が先月の記事(2022年9月を振り返っておけよ! ブログなんだからさァ! - 論理の感情武装)で取り上げた「」の字を、年表の途中に見つけた瞬間である。爆笑して膝から頽れた。もう忘れない漢字。なんでこんな漢字から覚えなきゃいけないんだ。もう一回言っとくけどJIS第4水準だぞ

簋は、神に供える穀物を盛る円形の宝具のこと

 

グリーン車

友人に引きずられてとあるライブに行ったが、その友人がカジュアルに快速グリーン車を選択するので驚いた。

確かにグリーン車は快適である。快速がすでに"快い"ものだから、マシマシの快さである。しかし、別に株で大儲けをしているわけでもない友人が課金するほど快適なのだろうか。その友人は、やや目立つメイクとやや目立つ格好をした女子だから、7人掛けでおじさんの隣になるのは嫌なのかもしれない。

 

私は自分でグリーン車を選択したことが2回ほどしかないので、古い記憶を辿りつつ、ホーム上のグリーン車券売機を操作してSuicaにグリーン券情報を叩き込んだ。空いている座席を見つけて座る。天井にはSuicaを読み込ませるタッチ部があり、これで席の占有権を示すようだ。

 

私「いつも快速乗るときグリーン車?」

友人「だいたいそう。基本座れるし。あと飲めるし」

私「ふうん、なるほどね……。確かに2階席からの景色はよい」

友人「景色そんな変わる?」

私「風景じゃなくて。人が下に見えるからね。超越者、殿上人たる我々に相応しい

友人「思想やば」

私「みんなそう思って乗ってるんでしょ」

友人「君だけだろ」

 

 

柳屋ビルディング

東京メトロの任意の駅から伸びる地下道を、あてもなく歩くことがある。

東京駅から日本橋の方にてくてく歩いていたときに、そのロゴが目に入った。柳屋ビルディングである。

目に鮮やかな配色

このロゴを見た瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、まさに源氏香図であった。

源氏香というのは、いわば"同じお香当てゲーム"(これを「組香」と呼ぶ)である。5種類のお香を5包ずつ準備し、完全ランダムでそのうち5つを選ぶ。この5つのお香を順に聞いたのちに、どれとどれが同じお香だったのかを当てる遊びである。

5種類が5個ずつあるので、すべて同じお香の可能性もあれば、すべて異なるお香の可能性もある。そうして、右から5本の縦線を引き、同じだと思ったお香を横線で繋いで出来上がる図案が、源氏香図である。それぞれに源氏物語の帖名がつけられているため、源氏香と呼ぶ。

柳屋ビルディングのロゴを見てみると、右から1, 3番目の縦線と、右から2, 4番目の縦線がそれぞれ横線で結ばれ、右から5番目の縦線は単独である。つまりこれは、「1, 3番目のお香が同じもの、2, 4番目のお香が同じもの、そして5番目のお香はどれとも違うもの。3種類のお香を聞いた」という意味になる。

源氏香 - Google 検索

 

さて、さすがに全部の図案は覚えていない。このロゴはなんだったかな……なるほど花散里か。柳屋という帖はないからな……しかし花散里とこのビルに何の関係が……?

いや、ちょっと待てよ。

ほんの少しだけ違う!?

源氏香図では、上に邪魔する横線がなければ、単独の縦線は一番上まで高さがあることになっている。しかし柳屋ビルの方はどうだ。一番左の線の高さが足りないではないか!!

これは源氏香とは関係ないのではないかという疑念が生まれる。他の可能性としては、ロゴ自体がビル群の意匠化に見えないこともない。実際にこういう風な建物の配置に見える位置があるのか……?

 

答えはこのHPにあった。

guidetokyo.info

 

曰く、「柳との文字の相同性から、花散里の図をモチーフにした」とのこと。やはり源氏香が由来だったのだ。

……え、そんなに似てるか? どっちかっていうと、柳の字は、縦線の1, 2, 4番目が繋がっていて、3番目だけが離れているように見えないか?

すると澪標の方がしっくりくる。

これは……ただの帖名である澪標とは違って、花散里は源氏に愛され(正室葵の上、事実上の正室紫の上、とすると)事実上のトップオブ側室だった才媛の名前でもあるから、なのかな……(邪推)

まあでも、これでロゴの謎は解けました。やったね!