論理の感情武装

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舞台『SS_P:em』の考察は一切せず好き好きポイントを挙げまくる

イルリキウムです。


先日、大盛況のうちに幕を下ろした舞台『Stray Sheep Paradise:em』。
私にとって、性癖ズバーーンな作品だったため、備忘録としてここに諸々記しておこうと思う。

本作は、聴衆に想像の余地を残す作風であり、それゆえに考察が捗っている呟きや記事を多く見かける。
私も私なりの解釈を持ってはいるのだが、こんなに自分の胸の中に大切にしまっておきたい作品は久々で、外気に触れさせるとその輝きがくすんでしまわないかと、とても怖い。
何なら、人の考察を読むことすら怖い。

というわけで、本稿は一切そうした「頭を使いそうな内容」には触れず、
観劇中、ここすき~!! と感じたことをただひたすらに列挙する、やや頭悪めのラインナップでお送りしたい。

※ただし、ネタバレ(およびそれに準ずる内容)は含んでいる可能性があるので悪しからず。

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:em観劇後、大慌てで購入した設定資料集


設定
声を大にして言いたいのだが、"名前"ほどその登場人物にとって重要なアイデンティファイアは無い。
世の中の物書きがどれほど名前に気を払っているかは判らないが、少なくとも私は重要視しているし、この作品でも大切なファクタだと思われていたに違いない。

私が小説を書いていた頃、「登場人物の名前はどうやって考えてるの?」と訊かれたことがある。
言葉遊びをふんだんに盛り込む場合もあれば、「可愛い響きで、適当に」の場合もある、と答えた。
この「適当」を見つけ出すまで、どれほどの推敲をすることか。
名前には生が宿る。
生を与える営みが、蔑ろにされるべきではない。
世の中には、作品に関係ないからといってファーストネームだけを設定する作者もいるが、それはキャラクタの人格創成において片手落ちだ。

もちろん、SS_P:emの作中、彼女たちのファミリーネームが呼ばれることはそう多くない。
しかし、設定上はきちんと存在している。
適当な名付けによるものではないことは、その名を一目みれば明らか。響きと意味合いが考慮されている。お見事。

モニターにマリエレのフルネームが表示されたとき、
「これは、全員にフルネームがあるな……!」
と感じ取って鳥肌が立ったことを思い出す。


舞台演出
何よりも、才能試験へ送り出される際の「Examination」から「羽ばたく準備はOK?」「めえめえ」、ここまで! ここまでセットで何もかもが良い!! 効果音も振りも、不自然なほど大袈裟な方がいい。あの異様な雰囲気、不自然こそが自然だ。
ヒツジたちの感情など意に介さず、淡々とスピーディに、かつ少しドラマティックに、試験の内容を伝えるラシェル&羊飼いコンビ。
そしてそれを受けて、「めえめえ」と応じるしかないヒツジ。
嫌らしくねっとりとした「OK?」は聴き所。
「めえめえ」の一言にはめいめいの気持ちが乗っている。なんちて。


リゼッタ・ロータス奥野香耶
推しだしとりあえず全部好きなんだが。よっ、座長。
悲痛な叫びであってもどこか優しい彼女の声音。やられない人はいないだろう。
というリゼッタ、誰の目につくかも分からない場所で自堕落決め込んでたり、本性洩れそうなときには如実に狼狽えてみたり、君まさか嘘をつきとおす才能は無いんじゃないか? はい可愛い。


ヒジリ・リンドウザカ/青木志貴
完全に見えるものがひと度綻びを見出だされると、そこからの崩壊はほんの一瞬だ。
万能の才能、とか、1万の才能試験、とか。分かりやすい誘導が敷かれ続けていた中で、「完璧超人ヒジリ」と「リゼッタの姿を認めてからの見た目だけ完璧ヒジリ」と「最後の才能試験が出されたあとのぶっ壊れヒジリ」との演じ分け。
すごかった、あれこそが機微。


ルクル・エスレル/永野愛
え? みんなルクル好きやろ???
ルクルのような友達がいたら、と思う大人はきっと多い。後先考えない、左右の注意確認をしない、そんなタイプの彼女は実社会では淘汰されがちだからだ。
だけど、傷ついてしまったときに周囲から心配され、傷つけた相手を一緒に怒ってくれる人がたくさんいる、それもまた、ルクルのような爛漫な性格の持ち主の良い特質だ。
もしかしたら、ルクルのようになりたいと思う大人も、少なくないのかもしれない。
あ、髪色と髪型が性癖でした。ありがとうございました。


アリス・アマリリス/佐藤日向
佐藤さんの表現力への賛辞はネット上でもよく見かけるところではあるが、具体的には、音量の小さい台詞に上手さが表れていた。
会場全体にはっきり聞こえるのに、この言葉は口許からすぐ地面に落ちている、と分かる。
さらに言えば、歪んだ性格の彼女は、声色に「あどけなさ」や「素人っぽさ」に似た何かを含んでいた。
上手く表現できないが、舞台上では、彼女しかそんな緩んだ声で話していない。緩んでいるのに、緊迫している。
降りていた、というやつか。


ファム・ブロッサム/遠藤瑠香
もうね、ファムさんみたいなお姉さんが、我を失ってしまって漫画的表現だと目の中にぐるぐる巻きマークが出てるくらいになって、「そうよね? 私間違ってないわよね?」って混乱しちゃってるところに「大丈夫。正しいのはあなたですよ」と囁いて支えてあげたい。本当の優しさじゃないとしても。そんで一緒にダメになりたい。


ヒカリ・トレリス/栗生みな
ヒカリちゃんはですね……私が12年前からずっと好きでいる、生徒会の後輩ちゃんを思い出すキャラクタなんですよ……。喋り方とか言葉の選び方、語尾の表現、所作、仲良い子といるときのはにかんだような笑い方、もう似すぎてて途中から完全に重ねて観てた。セブンス・パスクゥムに、セリに別れを告げるヒカリが、私には○○中学校で私に別れを告げる後輩ちゃんに見えて耐えらんなくって4章はぼろっぼろ泣いてました……ごめんなさい小玉さま淡乃さま栗生さま。最高でした。
その後輩ちゃんは私のことも慕ってくれていて、お互い20代になってから会ったのだが、好き同士故に距離を置かなくてはいけない、みたいなやつがあって、うん、女々しい私はスマホの待ち受けに中学校時代の私と彼女のツーショットを設定しているんだけ


セリ・アセビ松村芽久未
セリのチャラい感じに当てられて方々で百合展開が起こるのかと思いきや、彼女はヒカリという爆弾を抱えていた。あの学園セリファン多いんだろうな。というか生徒会メンバーそれぞれに一定のファンはいるだろうな。そういうキャピキャピした子達のセリトークを聴きたい。照れたら一番可愛いのがセリ。間違いない。


マリエレ・コラレット/松田彩希
マリエレさんは噛ませだったわけだが、彼女のようなステロタイプツンデレお嬢様が鼻をあかされてめげて、しばらく登校拒否になるってのはなかなか渋かった。そのおかげで、帰ってきたときのマリエレさんはめっちゃ可愛くなってましたね~よしよし~。


ヒヨク・クレイボール/柳瀬晴日
大っ好きです。LOVEです。心臓鷲掴みの脳天大震災。
自分が放送やってたから、イケボというオーダーを受ければ出せるんです。でも違う。自分と人のイケボは全然違う。イケボ使いは惹かれ合う。多分。
はぁ……まーじで、ヒヨク尊い

えっ……? 尊い……。


レンリ・クレイボール/柳瀬晴日
比翼連理の契り。レンリも尊い。アリスの前ではレンリはヒヨクなんだから。リゼッタより嘘をつき通すのが得意認定。


ノゾミ・カモミール/一村すみれ
ノゾミはね、大迷惑ガールなんだよな。絡まれたらめんどくさいタイプなんだよ。ただ、味方につけておくと、誰かと敵対したときに後ろから「そーだそーだ!」って援護射撃してくれそうだから、そういうとこが好き。
本気になったら一所懸命。一見子供っぽい夢でも貫き通せるのはごく僅か。そういうところはもっと好き。才能だと思う。メイドレスの才能、あるといいね。


レイナ・サナ/日下部美愛
ノゾミごめん。私はレイナ推しだ。3人組だとちょいクール、ちょい単純みたいなキャラに惹かれる節があるから。白皇学院生徒会では朝風さん。


ユズ・ソレイユ/栗野春香
結局メイドレスは、3人組アイドルの典型を映し出したユニットだ。ユズの後輩"っぽさ"は庇護欲をかき立てられてなんともむず痒いが、ステージに立って客席を煽れるようになった姿を見ると、更に応援したく……あれ、思う壺じゃね?


ラシェル・ヤエザクラ/山下夏生
ありがとうございますありがとうございます眼鏡……眼鏡だーーー!!
夏生さんはほっそいフレーム似合いますよね! 羊飼いさまと仲良さそうなのもいいですよね! 息ピッタリ! 羊飼いに何を言われても動じなさそうだし、羊飼いに何を言っても面白がられそうな彼女は絶対無二。山下さん以外ではあの鋭さと丸さを兼ね備えた視線は扱えない。
 

「めえめえ~」も「羊飼いさま……!」もラシェルっぽくなくてラシェルっぽい。ってかなにこれみんな最強かよ。


エツコ・テラコッタ/谷茜子
はいエツコです。めっちゃ推せる。
一人だけ完全に別の空気を纏っていて、とてて、という効果音が似合うような動きがめちゃくちゃ愛らしい。口がぼけっと開いてたり、手首が背屈してペンギンっぽくなってたり、エツコというキャラクタを谷さんで観てしまったら、もう彼女以外では観られない。顔立ちなのかな、不思議なほどあの衣装にも合っていた。最近気付くとエツコのことばかり考えている。


フレームメイド/唐井萌々子・三宅朝子・畠山沙樹・黒須みらい・三栗千鶴・伊井ひとみ
きゃんきゃんした子達は苦手なんですけど、彼女たちの舞台装置としての活躍には目を見張るものがあった。特にエレベータ的な移動装置の扉を模した額の動き。あれが無かったら私が愛する演出の半分は魅力を失する。恐るべしフレームメイド。


羊飼い/持田千妃来
彼女は喋る度にぞくぞく来た。初めは少しトーンが上擦り気味なのかとも思ったが、なかなかどうして、彼女の声には粘着力がある。台詞の中ほどで密度がグッと上がるのだ。「羽ばたく準備はOK?」の「オーケー?」を何度も聴きたくて、もっと才能試験のシーンを、と私は客席で願っていた。「カモン!」も好き。ヒジリに対して言い放った「羽ばたけ」にも戦慄した。羊飼いとラシェルのトーク番組チャンネルがあったら契約する。絶対する。


わかり手さんお待ちしております。