論理の感情武装

PDFに短し、画像ツイートに長し

吹奏楽曲『天国の島』をネタに、パーカッションパートの話をする

イルリキウムです。

 

たまにピアノやピアニカ動画をTwitterに上げている私であるが、ピアノを習い始めたのは6歳のときだ。
楽譜が読めて、かたや運動はというと、へっぽこ。特に球技は超へっぽこ。
そんなイルリキウムは、小学校のとき何部に所属していたでしょうか。

 

はい、吹奏楽部。正解。
パートはトランペットである。楽器としては専らコルネットを担当していた。

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トランペットより一回り小さく丸っこいのがコルネット

〔参照:ヤマハ | YCR-8335 - コルネット - 概要

 

母はフルートを勧めたのだが、女子たちの壮絶な争いに巻き込まれることが明明白白だったため、賢明なる10歳の私は金管をチョイス。
唇とマウスピースとの大きさを入念にチェックし、父が吹いていたというホルンと被らないようにした結果、トランペットパートに収まったのである。

ちなみにフルートは嫌いではなかった。吹けるもんなら吹きたかった。
エマニュエル・パユみたいな「貴公子~!」ってタイプでもないしね、と言い聞かせて諦めたのだ。

小6からは、地元の吹奏楽団体のお手伝いもし始めた。
しかし、中学に入学すると、何の因果か私は放送部へ入部する(正確には、入部を余儀なくされたのだが)。
コルネットは小学校のものを借りていたので、ここで手から離れてしまったのだ。

そこで、地元の団体ではピアノを受け持つことになった。当然の流れといえよう。
とは言っても、ピアノやオルガンを使う吹奏楽曲は、それほど多くない。
鍵盤楽器なら弾けるでしょ」と当たり前のように言われ、次第に打楽器の譜面も渡されるようになる。

……ピアノ弾けてもシロフォンは弾けないですけど?

指と腕じゃワケが違いますけど???

そんな困惑をよそに、私は完全にパーカッションパートに呑み込まれた。

 

どうも~。パーカッションのイルリキウムで~す。

 


 

パーカッションというのは、ステージ上では大抵、楽団の後方から側方にかけて控えている軍団である。
楽器がたくさんあるので、一人が複数の楽器を演奏する。一つの譜面にも複数の楽器が一緒に書かれてある。
そのため、ステージ上をよくちょろちょろ動いているのが、我々なのである。

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こんなイメージですね。〔いらすとや〕

ティンパニバスドラムヴィブラフォンなど、デカくてそうそう持ち運べない奴らと、
トライアングル、タンバリン、ギロなど、持って歩くのに苦労しないサイズの奴らに大別される。
後者はよく「小物(楽器)」と呼ばれる。
はっきりした定義は無いが、音高が意識されず、リズムに彩りを与える目的の小さめの楽器のことを指すことが多い。

「小物」という言葉だけ聞くと、イメージはあまりよろしくないだろう。
・リズム感があれば誰でも出来る
・パーカッションのあぶれ者
チンドン屋
みたいなイメージを持たれている方がいるかもしれない。


んなわけあるかい。
小物は、超難しい。
やればやるほど難しい。


今回は、私が愛してやまない "小物大活躍曲" を紹介したいと思う。
2011年全日本吹奏楽コンクール課題曲のひとつ、佐藤博昭作曲『天国の島』である。

 

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吹奏楽経験者ならば、かなりの高確率で耳にしたことがあるはずの有名曲。
中には演奏したことがある方もいらっしゃるのではないか。

北海道は天売島をイメージして作曲されており、
日本的音階、音色による自然のイメージ、などなど、おすすめしたいポイントは山のようにある。

しかし今回は、パーカスに着目しまくる。
うるさいくらいパーカスの話をする。
パーカスが嫌いな方(いるのか)は湿疹が出る前に読むのをやめられたし。

 

※どうやらパーカッショニストの中には、「パーカス」という略称を嫌う者が一定数存在するらしい。私は別に気にしないが、「パー」で「カス」みたいな響きだからか。あーなるほど。

 


 

0:12 開幕を告げるクラベス

クラベス奏者になったならば、この1発に命を賭さねばならない。
これが良い音で鳴れば今日一日は薔薇色ハッピー。
イマイチな響きだったら、やることなすこと上手くいかないだろう。

本曲の解説にはよく「鳥の鳴き声を思わせるピッコロソロで幕を開ける」という旨のことが記されているが、
誰がどう聴いても、幕を開けているのはクラベスである。え? そうでしょ?
全ての音に先立ってクラベスが嘶き、場の空気を締める。

クラベスとは木の棒2本1組の楽器である。

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羊羹ではない。

〔参照:クラベス - Wikipedia

 

我が国の楽器である拍子木と見てくれは似ているが、奏法は異なる。
拍子木は、直方体の木を平面同士で打ち鳴らす。
面がぶつかるので、一般に音としてはペチン、という印象である。

一方、クラベスは、母指球の辺りと親指以外の4指で挟むように一方を持ち、
もう片方で、凹ませた手のひらとクラベスで出来た空洞に響かせるように、これを打ち鳴らす。
点で鳴らすので、音としてはカンッ、と鋭い。

手の凹み具合や、アプローチの角度によって、容易に音が変化するのだ。
ただ漫然と打ち付けているわけじゃないのだ。


0:12- 冒頭、ボンゴとクラベスの掛け合い

ピッコロの裏で鳴っている音に注目。
徐々に間隔を狭めながら、ボンゴとクラベスが迫ってくる。

ボンゴは、吹奏楽器の合いの手と同じタイミングだが、クラベスはその間を埋めるようにして鳴っている。
音高を持つ楽器に膜鳴楽器のボンゴを併せることで、音に幅が生まれている。
動画ではスネア・スティックで叩いているため、アタックは強め。だからボンゴが音に埋もれない。
(スティックで叩くようにという指示は無かったと思う)
そして、クラベスは音のインパクトが強いので、裸で鳴らした方が鮮やかである。

おそらく、ピッコロは篠笛、ボンゴは締太鼓、クラベスは拍子木と、和の楽器のイメージを伴っているのだろう。

この静謐なる躍動感。この時点で既に名曲……。


0:25-26 開放しないサスペンデッド・シンバル

サスペンデッド・シンバルとはすなわち、「2枚合わせではなく吊るして使うシンバル」のこと。
動画では1:20に出てくるやつである。

サスペンドというと、2本のソフト・マレットで連打(ロール)して、
「ゾアゾアゾアゾア……(クレッシェンド)……ゾァアア~~ン!」と最後を開放するのがよくある使い方。
盛り上げたいときにはコレ入れればいいんじゃね、くらいには使われる。

しかしよく聴いてほしい。
ここの部分のシンバルは、大きな音になってプッツリと止んでいる。
最高潮に達した瞬間に、手で止めているのである。

止めるときは容赦なく止めなくてはならない。
振動しているシンバルに情けをかけて優しく掴んでも、大して音は小さくならない。

曲のメリハリのために、気合を入れて掴むのだ! 行けーー! ガシッ!!


0:27 テクニックが要るマラカスの使い方

見て見て! 左で一発「チャッ」と鳴らしてから右手で渦を巻くように音を出してるんだよ!
この「チャッ」があるか無いかは、マジで雲泥の差。
「チャッ」が無いと、もやもやしたまま、あ~なんかシャラシャラ鳴ってるな~、というぼやけた印象になりかねない。

あと、偏りなく粒の揃った音を継続して出すのは非常に神経を使うところ。
両手ともマラカスの扱いに習熟していないと出来ない芸当である。

一度、ラチェットでも良いかなと、指揮者と相談してやってみたことがあるのだが、
かなり過激になってしまい木管のトリルが薄らいでしまった。やっぱりマラカスやシェイカーが向いている。

ちなみにラチェットは歯車が歯を弾いてガリガリ言う、やかまし系の楽器である。

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これは上の部分をぶん回すタイプ。ハンドルを回すタイプもある

〔参照:ラチェット (楽器) - Wikipedia


0:32- スレイ・ベルのお出ましだ! 控えい!

スレイ・ベル。

また馴染みの無い楽器かもしれないが、こちらをご覧あれ。

youtu.be

クリスマスソングとしてお馴染みの『Sleigh ride(そりすべり)』。
この曲で頭から鳴っている鈴の音は、このスレイ・ベルによるものである。
鈴が全面にわんさか付いており、ちょっと触っただけでシャランと鳴る。

鈴といえば、小学生が使うような手で握る可愛いやつをご存知の方は多かろう。
あいつの演奏法としては、握った手の付け根を反対の手で叩いて鳴らすと、タイミングを調節しやすい。
スレイ・ベルも、まさにそんな感じでシャンシャンシャンシャン演奏することが多い。

しかし『天国の島』でのスレイ・ベルの肝は、「鈴の音を2拍にわたって持続させること」なのである。

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一回鳴らしただけでは2拍は保たない。

注意して聴いてみよう。

一回「シャラ~ン」と鳴っているのではなく、続けて「シャラシャラシャラシャラ~」と鳴っているはずだ。
これは、スレイ・ベルを上向きに持ち、天に掲げて捻るように振っているのだ。

そう。まさに神楽鈴。

神々しい……合掌……!


0:39- 引き継がれる金物の音色

オーボエのメロディが始まるとスレイ・ベルは引っ込んでしまい、代わって同じ位置に収まるのがサスペンデッド・シンバルだ。
今度は、柔らかいマレットで叩いた音ではない。
トライアングル・ビーター(トライアングルを叩く棒)を用いて出す、金属的な硬い音である。

これもなかなかテクニカルな話で、
シンバルのどの位置を叩くか(例えば端っこor内側、シンバル自体の波打ちや厚みの差も関係する)で音が変わるし、
ビーターにも長さや太さの選択肢がある。よりどりみどり。

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ピッキングの達人が懐に忍ばせているような見てくれ。

〔参照:https://www.amazon.co.jp/SUZUKI-スズキ-SP-500-トライアングル用ビーターセット/dp/B016B3BPYY

 

その中で最も雰囲気の合ったものを選ばなくてはならないのだから、
練習中にたくさんビーターを並べておいて、毎回別のビーターで、少しずつ叩く場所も変えて、
耳をそばだてながらどれが一番良いのか探るほかない。
この過程は楽しいものの、たまにとんでもなく合わない音が鳴ってしまったときは、指揮者に睨まれるというリスクを孕んでいる。

 

一定のリズムで鳴らされる金属音。

シャーン……。シャーン……。

錫杖(カッカラ)を持った僧が一歩一歩ゆっくりと海辺の崖を歩いている風景、あるいは、
遠くの山で鳴った梵鐘が朝霧に紛れて時を告げる様子、はたまた、
波が岩肌に打ち付けて花を咲かせる姿。
ありありと目に浮かんでくる。

 

なお、1拍目と2拍目には中くらいの太鼓(タム)が確かなリズムを刻んでいる。


1:05 欲しいところでウィンド・チャイムだ

この楽器の魔力はすごい。
完全にキラキラ。キラキラを体現した楽器である。キラキラの権化。

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キラキラキラキラ~ン☆

〔参照:ウィンドチャイム - Wikipedia

 

これこそ「誰でも出来る楽器」に見えるかもしれないが、どんな楽器にもコツが必要だ。
一定のスピードで、金属棒の根元をなぞる。
先端に触れていったり、アプローチの角度がマズかったりすると、棒が暴れて音にムラが生まれやすいのだ。
そんなこんなで、私は会心のウィンド・チャイムを鳴らせたことがあまりない。

なお、本譜ではウィンド・チャイムをきっかけにして合奏に深みが増し、再びスレイ・ベルの出番がやってくるという流れ。


1:46- テンポアップ。リズムの支配!

ここからトランペットによる主題が始まるまでの短い部分に、パーカス隊の「隊としての」旨味が凝縮されている。
いわば"縦"。
パーカスは、縦を揃えることが至上命題だ。

 

個別に見ていこう。

合わせシンバル(手で持っているやつ。ハンド・シンバルとも)は、小さな音量をコントロールするのが非常に難しい楽器である。
ちょっと触っただけで音は鳴ってしまうが、一点で触ったのでは「チャーン」と薄っぺらい音になってしまう。
やはり「合わせ」。複数箇所で同時に接触することで、より複雑な音を生み出すのがハンド・シンバルの醍醐味。
この入りの音量はめちゃくちゃ集中力の要るところだろう。

 

スネアは言わずもがな。軽快なリズムキープの主役だ。
スネアが走ると、みな走る。指揮者を無視してまでも走っていく。
16分音符のパッセージは特に走りやすいので、ここをビシッとテンポ通り決められると、楽隊は安心する。

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こんな感じのところですね。基礎練。

 

バスドラム
この楽器があるのと無いのとでは、圧倒的に何かが違う。
正直、小さい音だと、イヤフォンで聴いているだけでは分からないこともあるが、
逆にどれだけ小さい音であっても、生演奏ならばその存在感は歴然である。
叩く方は、どれだけ響くかを計算してアタックしなくてはいけないので、それなりに神経を使う楽器である。

 

ティンパニが入ると、安心感がある。
全てを受け止め、後ろから支える兄貴分のような。
よく見ると、両手のマレットで同じ面を同時に叩いていることがある。音量を上げるための手法だ。

これらが一つに合わさり、更に"縦"がピッと揃うと絶頂モンである。
裏拍で入ってくるシンバルの広がりも実に良い。


1:58 ああクラベス様

4拍目に再び現れるクラベス。今度は、前後に出番はない。1発だけ。
クラベス奏者になったならば! この1発に命を賭さねばならない!(2回目)

スネア・バスドラ・シンバルは音を残さないようにこのクラベスを待つ。
シンバルが打ってもいい場所ではあるが、あえて硬質な音を持ってくることで一気に締まる。
そして流れるように、麗らかな民俗的旋律へ繋がっていく。


2:01- スネアだよスネア

(ウン)タカタン! (ウン)タカタン

ちなみにバスドラもいい仕事をしているのでじっくり聴いてみてほしい。


2:07- 遂にグロッケンの出番が

鍵盤楽器のお出まし。
「鉄琴」と呼ばれがちなグロッケンシュピールである。

グロッケンが一部分だけ旋律をなぞることで、そのフレーズだけが軽やかな輝きを纏う。
妖精のようなヤツだ。細かいパッセージが似合う。

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グロッケンはメロディすべてを弾かない。

ここでは、グロッケンは無くてもいいし、一節すべてやってもいいと思う。
しかし一部分だけという妙。軽くなりすぎない。
上手いこと考えられているものだ。


2:12- スネアからのシンバルからのスネアからのティンパニ

タッタララララッタ、タッタララララッタ、シャーン! タッタラララララタタタン! デケデケドン!


2:30- トライアングルとリムショットの甘いランデヴー

目まぐるしく曲が雰囲気を変える中で、ひと際感情を揺さぶってくるのがこの部分。
トライアングルの音色が澄んだ空気の煌めきを伝えてくる。
スネアのリムショットが、遠ざかってしまった祭りのビートを思わせ、寂しさも感じさせる。

個人的には、ここのトライアングルは径の小さなビーターで「芯はありつつも細い音」を出したいところ。


2:47- テンポを増したシンバル

2つの異なるミュートでトランペットが掛け合いをしている(和楽器の印象)ので、
そこが聴かせどころなのは間違いない。

だが、ここでもトライアングル・ビーターでシンバルが鳴っているのだ。
動画を見ると、左下のグロッケン奏者がトライアングルを叩いたあと、そのままビーターを右手に持ってサスペンドの方へ向きを変えているのがよく分かる。

前半(0:39-)にも同じ音があったが、リズムとしては倍速に当たる(テンポが変わっているので注意)。
私が演奏したときは色々考えすぎて、前半よりも太めのビーターを使ってより内側を叩くことで音に強みを持たせたのだが、
うーん、同じ音でもよかったのかもしれない。
難しいな……。有識者のみなさんどう思われますか。


2:54- パーカス関係ないけど

ここから4小節の和声めっちゃ綺麗。


3:19- プレッシャーのかかるヴィブラフォン

「鉄琴」と呼ばれることの多い……、それはグロッケンだっての。
ヴィブラフォンは、鉄琴のお化けのような楽器で、
パイプ部分に付いている電動の翼によって「ホワンホワンホワ~ン」という音を表現できる代物である。

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鍵盤が銀色のものもある。

〔参照:ヤマハ | YV-3710JM - ビブラフォン - 概要

 

この曲におけるヴィブラの出番はここだけ。
なのに(故に、か)超目立つ!

分散和音はあまり早くもなく、かといってのんびりやるわけにもいかず。
次の重音も、すべての音を満遍なく聴かせたい。
そして、テンポはゆっくり。気をつけないとメロディと音の出がズレる。指揮者をよく見たい。

……かなりプレッシャーだ。

 

なお、こちらの記事(鼎談)で、打楽器の渡辺由美子先生が「琴のように」と指摘されているので参照されたし。

www.shobi.ac.jp

 

グロッケンが重なってくると安心する。ニコイチ。
ただここもテンポが揺れるので、集中力を切らすわけにはいかないのだ。


3:59 バスドラムソロとでも言うべき

1拍目に打つバスドラは、仲間がいない。目立つならここ。重厚感アピールするならここ!


4:27 完璧にスネアソロ

これ。クラリネットが自由なテンポで大らかに歌い上げ、直後のきっかけを作る重役はスネアに任された。
もちろんみんな指揮を見てはいるのだが、何度も練習した感覚を信じて吹奏楽器隊はブレスをする。
スネアがコケると、みなコケる。

同じリズムが繰り返されるので、なおのことだ。
ここが揃ったら勝ちかもしれない。
あ、シンバルもこの部分は超オイシいとこである。

さあ、フィナーレに向かってスネアとティンパニの掛け合いだ。

そして!!


4:35 大物が待ち構えている

その名は銅鑼(ゴング)。
最後の最後にあんなん鳴らさなきゃいけないなんて気が抜けないにもほどがある。
QueenBohemian Rhapsodyを彷彿とさせる。
……星野源くんも『アイデア』のラストでやってたな。オマージュかな。

『天国の島』のゴングも、中華風になってはいけない。
大きな音を出そうと躍起になって叩くと、「バシャ~~~ンwww」みたいな音が出る。雰囲気台無しだ。
出来れば音量より音長が欲しい。私は、スナップを効かせつつ上に伸び上がるように叩いている。
「ゴアアアァァァァン……」って感じ。これもしっくり来ないときは来ない。難易度高め。

動画では少しタメてからゴングのアタックがあるが、
好みとしては、テンポもあまり遅くせず、タメ無しで突っ込むパターンがいい。
これは完全に各々の趣味嗜好なのだが。

 

そういえば、似たような話があるので少し。
例えばベートーヴェンの第九番。ラストのところを思い出してほしい。
以下、譜面はIMSLPより拝借。

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余談だが、最後の休符フェルマータを感じてから拍手をしたい。

ラストのPrestissimoから、最後の音に至るまで、
一切の躊躇や情け容赦なく、テンポを落とさず走り抜けてほしいというのが、私の好みだ。
最後2小節くらいで若干rit.をかけるマエストロも多いが、どうしても残念に思ってしまう。
その点において、やはりカラヤンとベルフィルの第九は名演。
聴き終わって涙が止まらなくなる(この記事を書きながらもそうなってしまっている)。

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もうひとつ。例えば吹奏楽の名曲『アルメニアン・ダンス パートⅠ』(A.リード)。
これもラストの部分、やはりrit.をかけ気味になってしまう指揮が存在する。
具体的には、最後から2音目の音価がやや伸び、最終音を置きにいく、そんな演奏になる。
私は、最後までガンガン行ってほしいのだ。
最後が最高潮であってほしい。

そう、山下一史が指揮したN響のように。ほんのすこーし遅くなってはいるものの、ほぼ我が理想。

youtu.be

 

ああ、好みの話をしてしまった。

 


 
……と、まあ、パーカッション同士でないと共感が得られないような話を延々としてしまったが、
私の吹奏楽愛が伝われば幸いである。


ところで漢字の「率」がカバサに見える。12年前から言っているのだが共感が得られない。

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似てない?


イルリキウムでした。